夫の口出しはより一層…

 夫から不愉快な口出しをされたケースも、枚挙にいとまがありません。距離が近いだけに、より深刻な事態に発展しがちです。

【夫から妻への口出し】
・「母親なのに、どうして泣き止ませられないの」
・「えっ、ごはんできてないの。ずっと子どもと遊んでたんでしょ」
・「もっと頭を使えば、効率的に子育てできるんじゃないかな」
→この手の「苦労がまったくわかっていないセリフ」は、怒りを買うばかりか激しく幻滅されます。

・「躾も満足にできないのか」
・「うちの母親はそんなやり方してなかったけどね」
→どちらも、あまりに傍若無人で、あまりに恐ろしいセリフです。

 口出しというより手出しですが、中途半端な「イクメン気取り」も極めて不評。「俺がイクメンだから、お前は楽だよね」と言われて、「この人には、もう何も期待するまい」と悟ったケースもあります。

 逆に、夫が妻の言葉に腹を立てることも。「いつも子育てを手伝ってくれてありがとう」と言われて、

「僕は子育てを手伝ってるんじゃない。父親として参加してるんだ」

 と言い返したとか。言わんとするところはわかりますが、叱られた妻が気の毒でなりません。ともあれ、軽い世間話のつもりで、

「いつも子育てを手伝ってらして、奥さんは幸せですね」

 なんて言うと、それを失礼と感じる男性も存在するようです。意識が高い人はたいへんですね。

書影:『失礼な一言』石原壮一郎著『失礼な一言』(新潮新書)

 ママ友や同僚からの不愉快な口出しの実例も、大量に集まっています。不愉快の源は「こっちの事情や考えがあるのに、価値観を押し付けてくる」という点。そもそも、口出しする側は、その言葉の責任を取る気はまったくありません。

 子育てへの口出しに関しては、受け取る側がナーバスになり過ぎている一面も、たしかにあります。だけど、自信なんて持てないし、「母親としてちゃんとできていない」と必要以上に引け目を感じていたりもするでしょう。「もっと大らかに受け止めればいいのに」と言うこと自体、失礼な口出しです。

 もちろん、明らかに虐待だったり命に関わったりする場合は話が別です。そうじゃない限り、子育てへの口出しは、すべて「大きなお世話」であり、ほぼ確実に相手を怒らせたり傷つけたりする愚挙だと思ったほうがいいでしょう。

 口出しではなく、いかにやさしいねぎらいの言葉をかけるか。それを考えて積極的に実践するのが大人の務めであり、勝負どころです。