いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

会議で「いつも即答できる人」と「答えがはっきりしない人」考え方の決定的な違いとは?Photo: Adobe Stock

心に渦巻くモヤモヤ

「いま、何を考えていたの?」

 突然こう聞かれたら、「ごめん、なんでもない」と答えることがほとんどだ。

 こう聞かれるのは、だいたい私が人の話を聞いていないときだからだ。実際、人が話しているのに、ぼーっとしてしまっていることがよくある。

 それはさておき、実際に「いま、何を考えていたのか」と急に聞かれると、答えに困るものだ。

 いま、私は何を考えていたのだろう。あらためて思い出そうとすると、どうも要領を得ない。何を考えていたんだっけ?

 そういえば……

「さっきSNSの投稿に見知らぬ人から攻撃的なコメントがついていて、なんでそんなことを言われなきゃならないんだ、何も知らないクセに。私も調子に乗った部分はあったかもしれないけど、そんな言い方はないだろう。いや、私は悪くない。なぜなら……とあらゆる角度から正当化することを考えていた」

 こんなことは、人にはちょっと言えない。

 われながら良くない考えに気を取られていたと情けない気持ちになる。

 ストイシズムの哲学者、マルクス・アウレリウスは、こんな面白いことを言っている。

心を簡潔に保つ

誰かに突然、「いま何を考えていたか?」と尋ねられたときに、即座に「これ」とか「あれ」と包み隠さず答えられることのみ考えておくようにしなさい。
そうすれば、あなたの内側にあるのは簡潔さと善意だけだと明らかになるだろう。
(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 心がとっ散らかって、言葉にならないような雑念が渦巻いている人には非常に難しい課題だ。即座に「あれ」とか「これ」とか答えられる気がしない。

 しかし、少なくともそうありたいと思ってシミュレーションをしておくことは可能である。つねに「自分は何を考えているか」を意識して、思考を整理しておくのだ。

思考を整理しているから即答できる

 たとえば、私が考えていたSNSのもやもやなら、こう整理できる。

「SNSについた攻撃的なコメントに対し、私はどう考えるべきか。ストイシズムは、自分でコントロールできないことに執着するなと説いている。相手の反応はコントロールできないのだから、放っておけばいい。それよりも自分にできることにエネルギーを割くべきだ」

 これなら、シンプルだ。30秒以内に答えられる。

 思考を整理する習慣をつければ、余計な感情に振り回されることがなくなっていく。

 会社の会議でも、どんなことでもパッと答えられる人がいるが、それはその人が日頃から考えを整理しているからだ。さまざまなテーマの問題について考えをまとめていれば、近いテーマの質問でも即答できる。反対に、いつもその場で初めて考えているようだと、曖昧な意見が多くなりがちだろう。

 また、考えを整理するには、人の話に耳を傾ける必要がある。思考を整理する習慣があれば、自然と相手の話に集中するようになり、『何を考えていたの?』と聞かれることも減るということだ。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)