スマートフォンやパソコンをはじめとした電子機器、自動車や電車など、私たちの身の回りであらゆるものに使われている“半導体”。いまや、人々の生活や産業インフラに欠かせない存在となっています。しかし、半導体という言葉は知っていてもその意味や役割は知らないという人も多いのではないでしょうか? そこで、ビジネスシーンで求められる、大人の教養としての半導体を高乗正行『ビジネス教養としての半導体』(幻冬舎)から一部抜粋して解説します。
世界経済を語るうえで
中心的存在になりつつある半導体
「半導体は産業の米」という言葉がありますが、これはもはや古びた言葉です。米は、日本の食料安全保障の要に位置づけられる存在です。しかし2022年の今、半導体はそんな米に例えるだけでは、その重要さを言い尽くせない存在になったといえるでしょう。
2021年の国際連合(国連)の調べによると、世界の総人口は約78億7500万人です。それに対し2021年の半導体の出荷個数は、米国半導体工業会(SIA)によると約1兆1500億個、出荷額は約72兆円です。つまり世界全体で見ても1人あたり1年間に約9175円、約146個の半導体が供給されている計算になります。半導体の使用量は先進国であるほど多く、日本国内だけでも出荷金額は4兆8000億円あり、それを全人口1億2000万人で割ると、日本人1人あたり1年間におよそ4万円分の半導体が供給されていることになります。半導体が1個あたり数十~数千円であることから考えると、日本人がかなり多くの半導体に依存しながら生活していることが分かります。
もちろん世界経済に大きな影響を与えるものは半導体以外にもたくさんありますが、半導体業界に何か大きな出来事があったとき、影響を受けない産業はないといっても過言ではありません。半導体が世界の経済に及ぼす影響はそこまで規模、範囲ともに拡大しているのです。そんな今、半導体を知らずに世界経済を見ても、事象の表層しかとらえられないでしょう。半導体の知識は今やビジネスパーソンにとって必須教養の一つになっているのです。