長い間、体を動かさないでいると、人間なら血行不良から命にも関わる血栓ができかねない。しかし、何カ月にもわたって眠り続ける冬眠中のクマにこうした問題が生じないのはなぜなのだろう。この疑問を解く鍵はあるタンパク質にあることが、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(ドイツ)を中心とする国際研究グループが実施した13年にわたる研究から明らかになった。研究グループは、この発見が血栓予防薬の開発につながるとの期待を示している。研究の詳細は、「Science」4月13日号に報告された。
この研究を行うことになった背景について、研究グループの1人である同大学のTobias Petzold氏は、「冬眠前のクマは、起きている時間の大半を食べることに費やして体重を大幅に増やし、1年の半分にも及ぶ冬眠中には何もせずに寝て過ごす。人間がこのような生活をしたなら、肥満、筋肉減少、骨密度低下、2型糖尿病、血栓症など、さまざまな健康上の問題が生じるだろう。それなのにクマは、冬眠明けでも健康に衰えが見られない。何がクマを守っているのかを突き止めれば、理論的には、“現代のライフスタイル”に関連して生じる人間のさまざまな疾患に対する新たな治療法につながるかもしれないと考えた」と語っている。