4月初旬、OPECプラスを構成する複数の産油国が自主的に原油の生産量を大幅に減らす方針を表明した。メディアは「サプライズ」減産、油価上昇は続くとの見通しを示している。長期連載『エネルギー動乱』の本稿の後編では、サプライズ減産を巡りサウジアラビアが米国から離反するとの見方について論考するほか、世界経済の後退を招くかどうかについて原油価格の動きを基に検証する。(エネルギーアナリスト 岩瀬 昇)
OPECプラスがサプライズ減産
サウジは米国から離反するのか
2023年4月、石油輸出国機構(OPEC)とロシア主導の非OPEC産油国で構成する「OPECプラス」のサウジアラビア(サウジ)など数カ国は、5月から23年末まで日量約116万バレル(116万B/D)を「自主減産」すると発表した。3月から50万B/Dを自主減産しているロシアも同調し、年末まで延長するとした。メディアは、「サプライズ減産」だと報じた。
米政府は昨年10月、「米原油先物のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が67~72ドルになったらSPR(戦略石油備蓄)を買い埋める」と発表していたが、エネルギー長官は3月に「年内の買い埋めは難しい」とコメントした。数十万B/Dの新規需要が来年以降に後ろ倒しになったことになる。
これがサウジを動かした、と報じられている。米国が前言を翻したことに怒ったサウジがサプライズ減産をしたので、米サ関係はこれまで以上に厳しいものになるだろう、と。
寄稿の前編である『原油価格、OPECプラスがサプライズ減産でも100ドルを超える可能性は低い』でも触れたように、今回のサプライズ減産によって、原油価格が「higher for longer(より高く、より長く)」につながったら世界はどうなるのか。ポイントは以下の3点だ。
(1)ウクライナ侵略中のロシアの石油収入が潤い続け、戦争継続能力が強化される?
(2)サウジは今よりも米国と離反する?
(3)そして、今でも脆弱な世界景気はホンモノの不況に突入する?
(1)については前編で分析している。後編の本稿では(2)と(3)について論じていく。