人と闘うな、課題と闘え
それは、課題です。
私はコンサルタントとして、だれもが知る大企業から社員6名の石けん会社まで、北は北海道、南は沖縄まで、数多の企業のビジネスパーソンと話をしてきました。
社長にしろ、若いプロジェクトリーダーにしろ、肩書き、年齢関係なく「頭がよくて、慕われる人」はいます。
社内の人も、社外の人も、ついてくる人です。
ビジネスを進める上で(プライベートでもですが)、信頼を得ることほど大事なことはありません。
「この人と一緒に働きたいな」と思ってもらわないと、長期的にうまくいくことは難しいのです。
そんな知的で慕われる人たちは、みな、人とは闘わずに“課題”と戦っていました。
人と闘わないと言っても、常にヘコヘコし、だれの意見にも同意するわけではありません。
むしろそういう人も、ビジネスの現場では信頼を得られません。
本当に頭のいい人は、人と闘わずに、相手と一緒に課題をみつけ、その課題を解決しようと奔走するのです。これが頭のいい人の態度です。
そして、コンサルタントとして叩き込まれたのも、
人と闘うな、課題と闘え
でした。
では、課題と闘う、とはどういうことでしょうか。
家具店で働く知人の話をしましょう。
あなたも、家具の販売員になったつもりで考えてみてください。
ある日、閉店間際に電話がかかってきました。
「食器棚がさっき届いたが、引き出しの底に小さな傷がついている、今すぐ交換しにこい!」
相当お怒りのようです。聞くところによると、配送員の態度も悪かったそうです。
しかし、食器棚の在庫を調べてみると今すぐ用意できるものがなく、取り寄せるのに4日ほどかかってしまいます。その旨をお客さんに伝えると
「ふざけるな! 今すぐもってこい!」
と激昂してしまいました。
とはいっても、商品がないので持っていきようがありません。
ここで、クレーム対応が苦手な人は“できないものはできない”と相手を説得しようとします。すると、相手と対立することになり、話がこじれてしまいます。
でも彼は説得するのではなく、お客さんの話を丁寧に聞きました。するとこんな話になりました。
「明日はお仕事でしょうか?」
「いや、明日から3連休だ。家族で旅行に行くんだ。子どもたちも楽しみにしてる。だから早くもってこい!」
「なるほど、それで今日……。」
「古い食器棚から家族5人分すべての食器を出して待ってたんだ。」
お客さんが、なぜこれほど怒っていたのか、彼はやっと理解しました。
食器棚に傷がついたことに怒っていたのではなく、配送員の態度に怒っていたのでもなく、食器棚を新しくして、“スッキリした気持ちで明日から家族で旅行に行こうと思っていた”その気持ちを削がれたことに怒っていたのです。
これが、お客さんの抱える本質的な課題でした。
でも、食器棚の在庫がないことは事実です。
そこで彼は、隣の店舗で、できるだけ状態のいい展示品の引き出しを確保してもらい、その状態のいい引き出しと、あるものを買ってお客さんの家に向かいました。
では、ここで問題です。
彼が怒っているお客さんの家に、引き出しとともに持っていったものとはなんでしょう?
さあ、みなさんならどうしますか?