タイ経済は中国「ゼロコロナ終了」で底入れ、総選挙で政局混沌もバーツ相場の影響小Photo:PIXTA

タイ経済が底入れしつつある。ドル高が一服し、バーツ相場が持ち直し、インフレが鈍化している。個人消費が上向き、中国のゼロコロナ政策終了で輸出や観光客数も回復している。アジア通貨危機時と違い、外貨準備も危機への耐性が十分とされる水準を確保している。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

インフレに苦しみ22年
10~12月期はマイナス成長

 感染一服を受けた経済活動の正常化の進展に加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復の動きも重なったこともあり、昨年のタイ経済は景気回復が期待された。

 しかし、通年の経済成長率は2.6%と前年(1.6%)から伸びこそ加速したものの、周辺のASEAN(東南アジア諸国連合)諸国が軒並み久々となる高い成長を実現したのとは対照的な動きをみせた。

 この背景には、同国経済は輸出がGDP(国内総生産)の3分の2弱を占めるなど構造面で輸出依存度がASEAN内でも比較的高いこと、財輸出の約15%強、コロナ禍前においては外国人観光客の3割強を中国(香港・マカオを含む)が占めるなど中国経済に対する依存度が高いため、中国経済がゼロコロナへの拘泥により減速したことが景気の足を引っ張ったことがある。

 さらに、商品高による世界的なインフレは同国にも波及し、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招いた。FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派傾斜を反映した国際金融市場における米ドル高は通貨バーツ安を通じて輸入インフレを招き、インフレ率は一時14年ぶりの高水準となるなど加速した。

 こうした事態を受けて、中央銀行は昨年8月、物価抑制を目的に3年8カ月ぶりに利上げした。その後も物価と為替の安定を目的に断続的な利上げを余儀なくされた。利上げが家計消費をはじめとする内需に悪影響を与える懸念も高まった。

 事実、昨年10~12月期の実質GDP成長率は、前期比年率マイナス4.16%(改定値)と5四半期ぶりのマイナス成長に転じるなど景気底入れの動きが停滞し、実質GDPの水準もコロナ禍前を再び下回るなど頭打ちの動きを強めていることが確認された。

 しかし、年明け以降、タイ経済は回復に向かいつつある。その足取りを次ページ以降検証していく。