監視カメラ、専用バッグ、警備会社の輸送車…
マイナンバー情報へのナーバスな対応
なお、銀行がマイナンバーカードを本人確認資料として扱う場合、コピーを取ることを了解してもらう。ただし、コピーするのは表面のみであり、マイナンバーが記載されている裏面はコピーを取ってはいけない。
誤ってコピーを取った場合は、課長がシュレッダーで裁断する。マイナンバーは個人情報の中で最重要情報に位置付けられており、支店でそれを保管・廃棄できるのは、課長以上の職位にある者だけが許されるからだ。
コピー機は、行員を特定できるIDカードをかざさないとコピーできない仕様となっている。また、誰がいつ何をコピーしたかといった情報は、全て本部にあるホストコンピューターに記録されている。天井には不正防止用の監視カメラも設置されており、行員の不正行為に目を光らせている。
私にとって、この監視カメラは忘れたくても忘れることはできない。恐ろしいことに、私の印鑑を支店内の同僚に盗まれたことがあったのだが、その様子を天井の監視カメラがしっかりと撮影していたのだ。しかし、その映像は思いがけない結末を迎える。その一切は、拙著『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』に記してある。
話を戻そう。そこまでやるかと思うくらい、マイナンバー情報への対応はナーバスなものになっている。やっている当人としても、かなり神経を使う。
実際、銀行がお客からマイナンバーを取得した場合は、細心の注意を払って取り扱われる。お客がマイナンバーを記載した書類には、その目の前でマスキングシールが貼られる。このシールは、故意に剥がそうとすると剥がし跡が残るようになっており、私たちが目視できないようになっている。
そして、書類は鍵付きの専用バッグに収められ、毎朝夕に巡回する警備会社の輸送車で、集中的にオペレーションを行っている事務センターに運ばれる。このように、手間とコストをかけて慎重にマイナンバーの処理が行われている。これらは我が行だけではなく、他行も当たり前のように行っていることである。
目黒冬弥 著
「マイナンバー、受け付けました。明日、発送するので保管をお願いします」
「はい、お疲れさま」
窓口担当が、私にファイルを手渡す。
「お願いします」
「わかりました」
毎日欠かさず、私たちは基本動作を重ねる。
この銀行では、つらいことも喜びもたくさんあった。今日も私はこの銀行に感謝しながら、基本動作を繰り返している。
(現役行員 目黒冬弥)