ChatGPTの回答は
必ずしも「正解」ではない

 葵氏は「ビジネスシーンにおいてもChatGPTは活用できます。ただ、ChatGPTを使うにあたって注意を払うべき点があります」と話す。

「まず、ChatGPTの回答はあくまで『より確からしい回答』であり、100%正しい回答とは限りません。ChatGPTが参照したデータに誤りがある場合や学習していない分野・領域に関しては、“知ったかぶり”で不正解を出力する可能性があることを念頭に置く必要があるでしょう」

 ChatGPTは2021年9月以前のデータを基に学習しているといわれており、2021年以降のデータに関しては適切な回答を行わない可能性がある。たとえば、2022年のカタールW杯の優勝国を尋ねても正確な回答は得られない。

「ChatGPTから出力された情報は、情報元が明らかにされません(2023年5月18日時点)。そのため、ChatGPTで生成した文章を転用すると、文章が誤っていた際に生じるすべての責任を負わなければならなくなります。つまり、ファクトチェックが必要になる前提で、使用しなければならないでしょう」

 また、今年4月に韓国のサムスン電子で従業員が機密情報をChatGPTに流出させたと問題になったように、ChatGPTに入力した情報に対して機密性が担保されていない点も注意が必要だという。

「ChatGPTに入力した情報は、何らかの形で漏洩するリスクがあることを踏まえて活用するべきでしょう。4月25日にOpenAI社が『チャット履歴を残さない設定を追加した』と、プライバシー保護を強める姿勢を示していますが、個人情報や会社の機密情報の入力はおすすめしません」

ChatGPTの
ビジネス活用術

 先述した留意点を心に留めつつ、実際にどのような場面でChatGPTをビジネスユースに活用できるのだろうか。

「メールのテンプレート作成など“お堅い”文章を書く際に、ChatGPTを活用して下地を作ってしまうという使い方がおすすめです。ChatGPTは日本語の正しい手紙の作法なども学習しているため、『時候のあいさつを入れてください』と追加条件で書き込めば、汎用性が高く丁寧なメールの文面を考えてくれます」

 新入社員の壁になることも多いメール文章の作成においても、ChatGPTは頼もしい味方になってくれるのだという。

「たとえば、取引先と会食した翌日のお礼のメールを書くときも、正しい言葉遣いで書けているのか緊張してしまう人もいると思います。ChatGPTでベースの文章を作成してから会食時の個別の体験を文章に盛り込むことで、相手に悪い印象を与えずにスムーズなコミュニケーションを図れるでしょう」

 また、文章の校正や誤字脱字の確認をChatGPTにお願いすると、相当なスピードで修正してくれるそうだ。