ベストドレッサーはインドネシア大統領?
今回、到着時のネクタイに赤を選んでいたのはトルドー首相とスナク首相でした。赤はそもそも情熱の色で、信頼の紺との組み合わせは、政治家が好む色です。それだけではなく、議長国である日本の国旗も意識したネクタイ選びだったのではないでしょうか。さらにスナク首相のカープソックスには岸田首相も心をわしづかみにされたはずです。たかがファッション、わざわざセレクトの意味を説明するケースの方が少ないと思いますが、されどファッション、意図をくみ取ってうれしいと感じる相手がいることも確かなのです。
このSNS時代に、服装で少しでも間違ったメッセージを出せば政局にもなりかねないと、保守的になるのはどこのリーダーも同じ気持ち。だからこそ一歩踏み込んでおしゃれをしてくださる来賓には、ホスト国民としてとてもありがたい気持ちになります。
その意味で、選びがちな色のスーツではないのに、今回の広島で一際おしゃれだったのは招待国インドネシアのジョコ・ウィドド大統領だと思います。グレージュの夏のモヘア素材と思われる美しい仕立てのスーツに、グリーン系のネクタイ。奥様のベージュとオレンジ系のコーデと絶妙に色がマッチしていて、最もエレガンスを感じるカップルのコーディネートでした。
アメリカの著名な心理学教授が提唱するメラビアンの法則では、人は見た目が9割といわれています。これをリーダーが戦略的に取り入れるかどうかで、国際会議でのパフォーマンスが飛躍的に上がるとすると、一国民として首脳のファッションもまた見逃せないポイントになるでしょう。
リーダーの装いは、単なるおしゃれとは違います。どんな印象に見せたいか、自分の個性をルール内でどう表現するか。あらかじめ与えられたフォーマット内でのスタイリング力を、文化や言語を超えて世界を舞台に発揮する醍醐味があります。