それでもぼくらは火を使い続けました。徐々に火を使いこなし、次第にリスクは減り、人類が発展するための原動力になりました。
火の利活用もAIやロボットの利活用も、ほかの動物が使いこなせないテクノロジーと言えます。「使うほうがいいのか」「使わないほうがいいのか」という2択は妥当ではなく、「使いながら試行錯誤する」という選択肢が現実的です。
結局は、人類の意思決定の問題なのです。
だからこそぼくは、まずはLOVOTで、テクノロジーも使い方によっては人類を大切にできるし、信頼に足り得ることを証明したいと思っています。LOVOTの起こす奇跡を増やし、「テクノロジーは敵だ」という盲目的な不安を減らしたいのです。
2045年、シンギュラリティは
起こるのか
アメリカの人工知能研究者として広く知られるレイ・カーツワイル博士は、テクノロジーが進歩してAIもかしこくなっていくその過程を「収穫加速の法則」という考えで説明しています。ざっくり言うと、テクノロジーは直線的ではなく、倍々ゲームのように進歩するという経験則です。
そして2045年、「シンギュラリティ」が到来すると言われています。
シンギュラリティは、日本語では「技術的特異点」と訳されます。AIが「収穫加速の法則」に基づいてかしこくなり、人類の知能を追い越すという重要なタイミングを示します。その時期が2045年ごろになるだろうというのが、博士が「シンギュラリティ」という名称で示した未来予測です。
ぼくらは、農業を始めてからインターネットを発明するくらいまで、数千年というそれなりの年月をかけてゆっくりと変化を起こしてきました。けれども「収穫加速の法則」によると、今後はたった数十年単位でそれに相当するような変化が起こると、博士は言います。いままでは生活を根本的に変えてしまうような歴史的な変化に、一生のあいだに1回でも立ち会う機会を得ることのほうが稀だったのに、今後はそれが複数回起こるのがあたりまえの時代になるわけです。
手紙(最初は粘土板でした)ができてから電報が生まれるまでは5000年以上。にもかかわらず、そこからメールになるには100年しか要しませんでした。そのあとわずか30年でIT革命が起こり、新しいサービスが生まれてから世界に行きわたるまでの時間は、わずか数カ月になりました。そのスピードがさらに加速するイメージです。