
日本の経営者の報酬が低いと指摘されて久しい。それでも、実は日本の上場企業には「年収1億円以上」のビジネスパーソンが1109人もいる。成果に見合った報酬を受け取ることは当然といえよう。ただし、大事なのは納得感だ。業績や株価が振るわなければ株主は不満を持つだろうし、なにより従業員の士気が下がる。そこで、小売り&外食業界の1億円以上もらう役員と従業員の年収格差ランキングを作成。特集『1億円以上稼ぐ取締役1109人はもらい過ぎ!?「年収1億円以上幹部」と従業員の年収格差ランキング』(全24回)の#3では、小売り&外食業界の年収1億円以上の経営幹部と一般社員の年収格差の実態を調査、実名ランキングで61人を検証する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
2年連続減益なのに
従業員の944倍の年収!
経営幹部が従業員の944倍の年収をもらっていた。しかも、経営成績は振るわないのに……。
あなたは、そんな会社があったら働きたいと思うだろうか?それが、実際に存在するのである。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)のジョセフ・マイケル・デピント取締役の年収は2024年の実績で77.32億円。同社の従業員の平均年収は819万円だから、なんと944.19倍にもなる(なお、デピント氏は3月9日付で取締役を辞任。北米コンビニ子会社のCEO〈最高経営責任者〉職は続ける)。セブン&アイ・HDの業績は、海外のコンビニ事業の不振などで純利益が2年連続の減益に陥っている。
ダイヤモンド編集部では、経営トップの会長、社長のみならず役員を対象に、年収1億円以上の高額な報酬を受け取っている人物を業界別に集計した。1社から複数人が記載される場合もある。その経営幹部である人物の年収と従業員の平均年収を比較し、何倍の開きがあるかでランキングを作成した。数字が大きくランキングの上位にいるほど、従業員の待遇との格差が大きいことになる。
また、本特集では高収入を単純に批判する狙いはない。ランキングには、年収額と併せて、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、時価総額も掲載しているので、それらに「見合う年収」を得ているかどうかの判断の参考にしてほしい。今回対象としたのは小売り&外食業界だ。
倍率が高く従業員との格差が激しいトップとなったのは前述のジョセフ・マイケル・デピント取締役だ。後述するがセブン&アイ・HDのPBRとROEは業界平均よりも低いにもかかわらずだ。しかも、2位につけた経営者の倍率が94.87倍だから、10倍近くも開いている。
他にも全ての経営指標が業界平均を下回るにもかかわらず、従業員の50~80倍以上の年収を受け取る小売り&外食業界の幹部が複数いた。小売り&外食業界は年収が低い企業も多いため、格差が際立つのだろう。
セブン&アイ・HD、パルグループホールディングス、ヤマダホールディングス、ケーユーホールディングス、エディオン、コーナン商事、ゼンショーホールディングス、マツキヨココカラ&カンパニー、コロワイド、アールビバン、トーエル、FOOD & LIFE COMPANIES、ファーストリテイリング、サンドラッグ、ミラタップ、カワチ薬品、アダストリア、グローバルスタイル、王将フードサービス、バローホールディングス、ネクステージ、VTホールディングス、MonotaRO、ZOZO、良品計画といった企業の幹部たちの年収は幾らで、従業員の何倍をもらっているのだろうか。次ページで実名と共に一挙に見ていこう。