できれば恋をしたいが
コミュニティーの調和を優先
では、「恋愛をしたくない」と考えるZ世代は多いのだろうか?
長田氏によると「恋愛に対して嫌悪感を持つ人は少ない」という。
「恋愛リアリティショーやカップルインフルエンサーは、2018年頃から継続してZ世代に人気のコンテンツです。YouTubeなどで彼ら彼女らの恋愛模様を見て、『こういうカップルになりたい』と憧れるZ世代は多い。また、“蛙化現象(好意を抱いている相手が自分に好意を持っていることが明らかになると、反転して嫌悪感を抱くようになる現象のこと)”がZ世代を中心にトレンドワードとなっていますが、こうした『恋愛あるある』のような共感軸のコンテンツも人気ですね」
Z世代は男女問わず恋愛コンテンツに対する関心が高く、決して「恋愛をしたくない」と考えている人が大半というわけではないようだ。
「できれば自分も恋愛をしたい、と考えているZ世代が多いとは思います。ただ、Z世代の多くは自分の感情を常にフラットな状態に保ちたいと考えているようで、感情を揺さぶられる恋愛に飛び込むほど、恋愛に対するモチベーションは高くない。だからこそ、恋愛を疑似体験できるコンテンツが魅力的に映っているともいえるかもしれません」
また、Z世代の間で一般的になってきた「推し活」だが、自分に身近な存在を「推し」と称して応援する人も増えてきた。「好きバレ(=自分がある人を好きだと周囲に認知されてしまう)」によって、コミュニティの調和を乱すことを恐れ、「推し」として予防線を張っている場合もあるという。
「我々の調査では『Z世代の8割が何らかの“推し”がいる』という結果でした。Z世代の間では、『推し』の話題がコミュニティ内のコミュニケーションの中心です。複数の推しがいるのは当たり前で、コミュニティによって『推し』という言葉を巧みに使い分けています。同じ『推し』でもアイドルやインフルエンサーを応援するときから先輩や同僚が気になるときまで、『推し』という言葉の本気度にはグラデーションがあるのです」
ただ、アイドルやインフルエンサーを推す「推し活」の場合は、基本的に「推し活」と「恋愛」を分けて捉えるZ世代が多い。
「見返りを求めずに応援する推し活は、双方向の濃密なコミュニケーションが必要な恋愛と違って、卒業やスキャンダルがなければ裏切られるリスクは少ないといえます。そのため、推し活に熱意を注ぐZ世代も多いです。Z世代にとって、『推し活』は『恋愛』と並んでリアルを充実させる活動の一つなのです」