「言われたものを作る」のではなく
ニーズをつかんで将来を描く
ソニーには、リチウムイオン電池を手がけていた部門の担当者が、バッテリーの寿命を画期的に長くする技術としてデル会長のマイケル・デル氏に直接売り込みをかけた逸話もあります。また話はITからは外れますが、“消せるボールペン”でおなじみの「フリクション」のインク開発者にも、自らインクの用途を説明するために国内外を営業してまわったエピソードがあるそうです。
部品メーカーには、マーケティング部門がない会社が結構あります。受託で作ってほしいと言われたものを作るだけでも十分大きなビジネスになるので、自分たちの技術をどう使ってほしいかを説明する、あるいは顧客に何が求められているかを把握する必要がないことも多いからです。しかし、ソニーのイメージセンサーやリチウムイオン電池、フリクションのインクの例を見ると、やはりそれだけでは、大きな事業の成長は得られないのではないかと感じます。
元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は、半導体製造業は「ユーザー企業の今後の製品戦略を知って、予測して先取りしていくことが大事」といっています。坂本氏はかつてテキサスインスツルメンツ(TI)にいたことがあるのですが、TIでは技術系営業が7割を占めていて、顧客のニーズや不満を常に吸い上げていたといいます。それに対して日本企業は顧客のニーズを把握せず、悪い意味での「プロダクトアウト」をやる傾向があると坂本氏は述べています。