コンサルティング大手のアクセンチュアがグローバル本社の要職に日本法人幹部を起用する人事を決めたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。グローバルで欧米を上回って成長する「グロースマーケッツ」エリアの幹部に日本人が就くのは異例で、日本法人のプレゼンス向上が背景にありそうだ。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、日本での急成長の礎を築いてきた中核部門をけん引し、異例の昇進を果たすことになった日本人幹部の実名を紹介。アクセンチュアのグローバル戦略の行方も解説する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
全社的な急成長を主導する
日本法人から“異例の昇進”
「グローバルの成長をけん引してきた日本法人の地位向上を象徴する人事だ」。コンサルティング大手、アクセンチュアの日本法人の社員からそんな声が上がる、異例の幹部人事がダイヤモンド編集部の取材で判明した。グローバル本社の要職へ6月、ある日本法人幹部が異例の昇進を果たす。
コンサルタント業界では、アクセンチュアの急成長ぶりは際立っている。増収増益の局面が長らく続き、直近の2022年度第2四半期(22年12月~23年2月)の売上高は前年同期比5%増の158億ドル(約2.2兆円)と、同期では過去最高を記録した。
本連載内の『米アクセンチュア1.9万人削減へ、日本法人へのリストラ波及は?独自入手の内部メールに示唆』で解説の通り、アクセンチュアは3月下旬には米景気の先行き不透明感などから1.9万人という大規模リストラを明らかにしたが、前倒しで大ナタを振るったジュリー・スウィートCEO(最高経営責任者)の決断を、株式市場はむしろ一段の成長への布石として歓迎した。
実際、足元の株価は年初来高値を更新するなど復調傾向で、5月26日時点の円換算した時価総額は約26.8兆円。3月の本記事『アクセンチュアの時価総額はトヨタに迫る21兆円!デロイト、NTTデータに大差をつける理由』時点で、日本ナンバーワン企業のトヨタ自動車に10兆円差まで迫っていたが、さらに急接近している(30日時点でトヨタの時価総額は約31.7兆円)。
急成長をけん引するのが、主力の北米と欧州以外を指す、アクセンチュアが「グロースマーケッツ(以下、GM)」と呼ぶ地域だ。前述の第2四半期決算でも、北米(ドルベース)が5%増、欧州が12%増(現地通貨ベース)なのに対し、GMは14%(同)と上回り、成長を主導する存在となっている。
そして、GMの各地域の中でも好調なのが、日本市場なのだ。何しろ、第2四半期決算に関する説明会では、GMについて次のように言及されていた。「銀行および資本市場、化学および天然資源、公共サービスで売上高が伸びた。また、成長を主導したのは日本だった」。
実は、日本市場の急成長に不可欠な存在となっているのが、多種多様なサービス領域を手掛ける同社の起点とも言える「S&C(ストラテジー&コンサルティング)」部門である。今回、グローバルの要職には、この中核部門を統括として率いた日本人幹部が就くことになる。次ページでは、急成長を背景に異例の昇進を遂げることになった日本人幹部の実名や経歴などを明かすほか、アクセンチュアのグローバル戦略の行方までを解説する。