コンサルティング会社が地方拠点を開設する動きが加速している。ビッグ4の一角、KPMGコンサルティングは5月末に、同社初となるスマートシティ推進のための施設を沖縄県名護市に新設した。なぜ、いまコンサル各社は地方に打って出るのか。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、コンサルの地方拠点開設ラッシュの深層に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
KPMGが沖縄に新拠点
スマートシティを推進
「新拠点を設けることで、われわれの“本気度”を示していきたい」――。KPMGコンサルティングの宮原正弘社長はそう力を込める。
5月30日、KPMGは、同社にとって初のオープンイノベーションセンター「Nago Acceleration Garage」を沖縄県名護市に開設した。大都市圏以外に拠点を設けることも初となる。
同社は2022年8月に名護市と包括連携協定を締結し、かねて名護市が取り組むスマートシティ事業への支援に注力してきた。今回の拠点設立はその“集大成”といっていいだろう。
新拠点では、学生など地域の住民向けのワークショップやデジタル技術体験イベントの開催のほか、同時に設立された「名護スマートシティ推進協議会」のメンバー企業などの活動場所としても活用する予定だ。
スマートシティなどの取り組みを推進するKPMGコンサルティングの佐渡誠執行役員パートナーは意気込みをこう語る。「オンラインを活用することで、地方にいながら最先端のテクノロジーや人材と触れ合える『どこでもドア』のようなシンボリックな場所にしたい」。
現在は、現地採用2人を含む4人の常駐者を配置している。フロアはイベント開催時などに最大100人収容可能なスペースだが、長期的な目標として「名護市内での移転を前提に、さらなる拡大を目指す」(同氏)と鼻息は荒い。新拠点を足掛かりにさらなるビジネスの拡大を狙う。
社員数が1000人台ほどのKPMGにとって、地方拠点を設け、常駐者を送り込むことはある種の“大胆な投資”といえるだろう。実際、宮原社長は名護で取り組むスマートシティ事業について「投資も先行し、相対的に薄利であることは確か」と言ってはばからない。だが、「ブランディングや採用面での“目に見えない効果”があるほか、コンサルとして社会的意義の高い事業に取り組むことに価値がある」と、その重要性を強調する。
実はコンサル業界を俯瞰すると、KPMGに限らず、さまざまな狙いを持って地方拠点を新設したり拡充したりするコンサル会社が目立っている。驚くことに、ダイヤモンド編集部の集計によると、その数は何と20カ所弱にも上る。
次ページでは、コンサル各社の地方拠点を一挙に公開するとともに、“地方進出”ラッシュの背景にあるコンサルの思惑を、3パターンに分類して解説していく。