創立100周年を迎えた目白研心中学校・高等学校(東京・新宿区)創立100周年を迎えた目白研心中学校・高等学校(東京・新宿区)

前回は、男女別学校の新校長をご紹介した。今回は、大学系属付属校を含む共学校について見ていきたい。AI(人工知能)が目を見張る勢いで進化する時代に求められる学校マネジメントと教育内容は、これまで経験したことのない大きな変化を余儀なくされそうであり、その成否は、教育現場の責任者である学校長の手腕次第とも言えそうだからでもある。(ダイヤモンド社教育情報)

キャラクターが異なる早大系属3校

 生成型AI(人工知能)であるChatGPTなどの急速な進化は、教育と入試の仕組みにも大きな影響を与えていくことは間違いない。大学入試や中等教育での学び方も変わり目にある現在、そのかじ取り役を委ねられた学校長が、その学校の盛衰を大きく左右していく。その意味で、新任校長の実像をとらえておくことも、学校選びでは大きなポイントになる。

 私立大の系属校や付属校は、多くが系列大に進む本来のイメージでの系属付属校が早稲田や慶應義塾を筆頭に、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)では多い。次いで、卒業生の半分程度が系列大に進み、他大学進学も盛んな“半付属校”があり、ほとんどの卒業生が他大学に進むため大学とは同じ学校法人なだけの系列校といった具合に、内部進学率によって大きく三つに分けられるだろう。

 今回、早稲田大の三つの学校法人を異にする系属校で校長が交代した。いずれも大学の理事を務めた教授が担うことになるが、それぞれの姿はだいぶ異なる。2026年に早大は創立125周年を迎える。創立者である大隈重信は「人生125年説」を唱え、大隈講堂の時計塔の高さが125尺(約38m)であるように、早大にとっては大きな節目の年となる。

 早稲田大学系属早稲田実業学校中等部・高等部の新校長には、早稲田大学常任理事(広報担当)を務めた恩藏直人・商学学術院教授が就いた。「顧客、クライアント、パートナー、さらには社会全体にとって価値のある提供物を創造、伝達、提供、交換するための活動、一連の制度、およびプロセスのこと」を意味するマーケティング研究が専門で、アイデアマンなだけに、早稲田唯一の小中高一貫12年教育の学校の魅力をどのように増していくのか、大いに注目される。まずは、難関進学校同士の横のつながりを構築したい意向のようである。

 創立100周年時に国分寺に移転して共学化した早稲田実業学校とは異なり、早稲田中学校・高等学校は、現在も早稲田の地にとどまり、新興風館と新3号館が年内竣工予定である。内部進学率は半分程度の半付属校的な存在で、東京大をはじめとする難関国立大にも多くが進む男子校だけに、前回取り上げた同じ新宿区にある海城と競い合う面も強い。こちらの新校長には、マクロ経済学を専門とする笹倉和幸・政治経済学術院教授が就いた。学生部長、キャリア・センター長も務めている。恩藏・笹倉の両氏は共に1959年生まれである。

 1962年生まれの渡邉義浩・早稲田大学文学学術院教授は筑波大出身の中国史の専門家で、10年前に早大教授となり、文学部教務主任や大学理事(文化推進、地域連携、本庄プロジェクト)を務め、学校法人大隈記念早稲田佐賀学園の理事長にも就いた。今回、早稲田大学系属早稲田佐賀中学校・高等学校の新校長も兼任する。

 本校は首都圏入試も人気で、在校生に占める首都圏からの生徒が4割を占めている。将来を見据えて制定した「早稲田佐賀Vision25」では、学力の向上により推薦枠を50%から80%に増やし、全員が数IIIまで学んで文理の概念をなくし、国際性を高めるためアジア諸国からの生徒も受け入れるなど、新しい進学校の形を掲げている。ともすれば九州大に流れがちな卒業生をどれだけ早大に引き込めるかも問われそうだ。

 明治大も教授が付属校の校長職に就く傾向にあるようで、明治大学付属明治高等学校・明治中学校には、男子校時代の卒業生で、理工学部電気電子生命学科の井家上哲史(いけがみ・てつし)教授が就任した。