1万円札の福沢諭吉Photo:PIXTA

日本史を代表する啓蒙(けいもう)思想家の一人である福沢諭吉の格言は、「経営の神様」と称された稲盛和夫にも感銘を与えていた。どんな言葉に心を動かされ、その言葉をどのように自分の中で消化したのか。稲盛流の解釈をお伝えしたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「経営の神様」稲盛和夫は
福沢諭吉の言葉をたびたび引用

 毎日、ニュースをチェックしているつもりだったのだが、今さらながらにびっくりしてしまったのが、「福沢諭吉」デザインの1万円札は、昨年(2022年)の9月までに日本銀行は生産を終了していたのだという。えっと思って自分の財布を確かめたが、まだ「福沢諭吉」デザインだった。

 なんのことはない、福沢諭吉デザインの生産は終了したものの、新しいものはまだ流通していない。調べてみると、来年(24年)の上期には、新デザインである「渋沢栄一」の肖像画が描かれた紙幣の本格的な発行が開始される予定だ。5000円札は、樋口一葉から津田梅子。1000円札は、野口英世から北里柴三郎に切り替わる。

 福沢諭吉(1835~1901年)は、日本の啓蒙思想家であり、明治時代の日本の近代化に大きな影響を与えた人物だ。江戸時代の末期に生まれた福沢は、明治維新を通して西洋の科学技術や文化、教育制度を日本に導入し、後れを取っていた日本の近代化を推進することに尽力した。

 そして慶應義塾(現在の慶應義塾大学)を創設し、自ら校長を務めた。慶應義塾は、近代的な教育を提供する学校として、日本の教育改革に大きな役割を果たした。

 昭和に生まれた戦後を代表する経営者である稲盛和夫は、この福沢を敬愛し、幾度となく講演や著書で福沢の残した言葉を紹介している。今回は、「経営の神様」が感銘を受けた福沢の格言を紹介するとともに、稲盛流のその解釈についてもお伝えしたい。