コンサル大解剖Photo:Hiroshi Watanabe/gettyimages

日本に拠点を置く主要なコンサルティングファーム各社が相次いで「サステナビリティユニット」を立ち上げている。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、その理由やコンサル各社が進めるサステナビリティ関連の具体的な取り組みを多数挙げながら、こうした潮流がビジネスパーソンのキャリアに与える影響を考察していく。(コンコードエグゼクティブグループ CEO 渡辺秀和)

サステナビリティ時代における
コンサルファームの役割とは?

 日本においても、サステナビリティ経営が企業の中核的な課題として認識されるようになってきた。企業の存在意義が、「最大利益を生み出し、株主により多く還元すること」から「世界をより良く、持続可能な状態にするための活動をすること」へと変化しているのだ。

 企業が環境や社会へ与える影響に着目するESG(環境・社会・ガバナンス)投資は、いまや世界の運用資産の3分の1を占めている。日本国内を見ても、プライム市場の上場企業にはサステナビリティに関する情報開示が求められるようになった。脱炭素やダイバーシティ、ステークホルダーの人権尊重など、ESGの観点を取り入れた経営をすることは、企業のリスク管理においてもはや必須ともいえる。

 また、社会課題解決系ビジネスが持つ潜在的な市場規模は、見過ごすことができないほど巨大だ。デロイト トーマツ コンサルティングの試算(2017年時点のデータに基づく)によると、全部で17つあるSDGs(持続可能な開発目標)の目標ごとの世界市場規模は、小さいものでも70兆円、大きなもので800兆円程度に上り、市場規模は合計で約2160兆円という試算が出ている。この動きを新たなビジネスチャンスととらえ、迅速に動くことができるかどうかは、企業の命運を分けるだろう。

 しかし、新たなテーマであるがゆえに、サステナビリティ経営を推進できる人材は社内にはまだ少ない。多くの企業がコンサルティングファームに当該領域のプロジェクトを依頼している状況だ。そのような中、コンサルティングファーム側も、クライアントからの要請に応えるために、体制の整備を急いでいる。多方面に広がるサステナビリティ関連の課題に対応するため、知見やノウハウを集約し、深化させるべく、新たなチームが次々と立ち上がっているのだ。

「社会貢献系の仕事に関心はあるが、報酬に恵まれず、選択しづらい」と考える人も多いだろう。しかし、前述のような変化の中で、サステナビリティ領域の仕事は、やりがいと報酬の両面から魅力あるキャリアとして、注目されるようになってきている。

 次ページ以降では、コンサルティングファーム各社が進めるサステナビリティ関連の取り組みをひもといたうえで、さらにこの潮流がビジネスパーソンのキャリアに与える影響についても考察していく。