ビジネスの現場では、人前でハキハキと話せる「社交的な人」が有利だと思われがちです。しかし、台湾出身で、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャン氏の世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(神崎朗子訳)によると、「内向的な人」こそ、冷静さ・思慮深さ・協調性といったビジネススキルを兼ね備えているといいます。
内向型の生まれ持った強みを肯定し、勇気づける本書には、「目からウロコの内容に感動した」「自分らしく生きていけばいいと気づけた」と日本中から絶賛の声が集まっています。
今回は、ジル・チャン氏の来日特別講演(ダイヤモンド社「The Salon」主催)の模様を、全2回のダイジェストでお届けします。(構成/根本隼)
リーダーとして活躍する2つのワザ
「内向的な人は優れたリーダーになれない」と思われがちですが、それは間違っています。
というのも、内向型の人ほど「傾聴力」「協調性」「情報収集力」「計画性」といったビジネススキルに秀でているからです。実は、リーダーとして成功するポテンシャルが非常に高いんです。
世界で活躍しているビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスクも全員内向型です。
「内向型リーダー」として成果を出すには、いくつかのコツがあります。
(1) 仕事を「コンフォートゾーン」に引き込む
やはり「コミュニケーション」がネックになると思います。少しでも心理的なストレスを減らすには、仕事を「コンフォートゾーン(安全地帯)」に引き込むことが大切です。
たとえば、大人数の前だと緊張してうまく話せないのであれば、少人数の会議を何回かに分けて行ないましょう。対面で会う必要性が高くなければ、オンラインでのミーティングに切り替えることも可能です。
自分の本来の力が発揮できるように、セッティングを工夫しましょう。
(2) 「仕事を任せる」ことを恐れてはいけない
内向型人間にとって、「仕事を任せる」のは決して簡単なことではありません。なぜなら、「人を困らせてはいけない」という意識がとても強く、「仕事を任せたら、相手を困らせてしまうのではないだろうか」とつい思ってしまうからです。
仕事を頼むときの心理的負担を考えたら、むしろ「自分でやった方が楽だ」とも思ってしまいますよね。
しかし、リーダーにとっては、「部下に任せる」ということも大切な仕事です。というのも、リーダーは部下が新しいことを学び、成長する機会を与えなければならないからです。
こうした「教育の機会」を与えないと、チームの成長が将来的に鈍化し、リーダーとしての責任を問われる事態になりかねません。最初は気後れするかもしれませんが、「仕事を任せる」ことに慣れていきましょう。
チームの戦力を最大化する
ビジネスの現場では、内向型の人と外向型の人が混在している組織がほとんどだと思います。両者をどのように協力させれば、チームの成果を最大化できるでしょうか。
彼らの仕事スタイルは、正反対です。内向型人間は、1人でじっくり考えながらアイデアを練り上げます。
対する外向型人間は、思いついたことをすぐ口に出します。自分の考えをためらわずに他者と共有して会話を交わすことで、よりよいアイデアを生成しようとします。
そのため、両者がそれぞれの長所を発揮できるように、バランスをとる必要があります。
私がリーダーだったら、午前中は会議を入れずに、内向型の人たちが熟考し、新しいアイデアを生みだすための時間を確保します。
そして、会議はすべて午後にスケジュールして、外向型の人がアイデアを出し合って議論できるようにします。
彼らとのコミュニケーションも、工夫する必要があります。内向型の人たちは時間をかけて情報を収集したり、計画の作成をしたりするのが得意ですが、一方の外向型人間は、瞬発的な発想に優れています。
なので、長期的な視点に立った意見を求めるときには、内向型の人に聞くのが得策です。でも、短時間でたくさんのアイデアを出してもらう必要がある場合は、外向型人間に頼むのがベターだと思います。