宇宙でビジネスをしたい企業と宇宙サービスを結ぶ「宇宙商社」、Space BD。同社を率いるのは元商社マンである永崎将利社長だ。JAXA(宇宙航空研究開発機構)からの委託民間事業を、スタートアップながら初めて受注、すでに数百件もの案件を手掛けている。永崎氏は「宇宙はこれから日本が世界で勝ち組になれる数少ない産業」と断言する。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#8では、世界で唯一という宇宙商社を率いる永崎氏に、そのビジネスモデルと日本が宇宙産業で勝つには何が必要かを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
宇宙の民間利用進む中登場した「専門商社」
元三井物産マンが描く勝ち筋とは
――三井物産を退社後、「宇宙商社」という、世界でもほかに例がない業態の企業を創業した理由は。
「日本から世界で勝てる産業を生み出す」という目標を達成できる分野として宇宙を選びました。米国の先行を許してはいますが、技術的には日本はまだトップグループを走っています。そして産業としての成熟はまだこれからで、決着はついていません。
これまでの日本宇宙市場は、そのほとんどが官需で占められていたのが実情です。企業や個人が、宇宙を「使える」世界を達成しなければ、産業としては成り立ちません。ただ、現在、宇宙が産業として成立するには、いろいろなところが欠落しています。そのため、全方位に必要な機能を提供し続けていきたい。
私はもともと産業を創造することに憧れて三井物産に入社した経緯があります。商社は戦後、事業を開発し産業を創造してきた歴史を持っています。宇宙産業についても、同様の存在が必要だと考えました。そこでSpace BDを創業したのです。BDとはBusiness Developmentで、そのまま「宇宙事業開発」をする企業です。
これまで一度も宇宙に関わったことがないし技術もないが宇宙を事業にしたい、という企業に併走し、それを形にできるのが当社の最大の強みです。これまではそうした相談窓口はJAXA(宇宙航空研究開発機構)しかなく、ある程度の技術や知識がなければそもそも宇宙事業参入への入場券すら手に入りませんでした。
永崎氏が率いる世界初の宇宙商社Space BDは、米スペースXと日本で最初に契約し、民間ロケット打ち上げ便の手配で、国内の最多の取り扱い実績を持つ。さらに、国際宇宙ステーション(ISS)の日本での民間利用を、スタートアップながらも独占的に担う企業だ。すでに50人の社員を擁し、宇宙における民間ビジネス拡大の旗手として注目されている。永崎氏は、今後の日本の宇宙ビジネスの未来についてどのような絵図を描くのか。Space BDのユニークなビジネスモデルと併せて、次ページから見ていこう。