急膨張を続けるコンサルティング界の巨艦、アクセンチュアはどこへ向かうのか――。ダイナミックに動くコンサル業界の今を届ける新連載『コンサル大解剖』の1回目では、業界の垣根をまたぎながら、猛烈な勢いで“領空侵犯”を繰り広げる同社日本法人の狙いを分析する。アクセンチュアは今や同業のコンサルファームや、分野の近いITベンダーにとどまらず、商社や広告代理店といった異業種にも次々と侵食を続けている。伊藤忠商事や電通などとの仁義なき戦いの実相を明らかにするとともに、アクセンチュアを軸に猛烈な変化を遂げる業界の今を解剖する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
“異次元”の積極採用で急拡大
初の上場企業買収「真の狙い」とは?
コンサルティング大手のアクセンチュア日本法人が、猛烈な勢いで勢力を拡大している。
引きも切らない国内コンサル需要を追い風に、業界内でも“異次元”の積極採用を進め、従業員数は日本法人だけで約1.9万人(2022年12月時点)規模に。10年前から約4倍、5年前比でもほぼ倍増した。
日本法人は非上場だが、母体の米アクセンチュアは米国で上場し、世界中で73万8000人(22年11月時点)の従業員を誇る巨大企業だ。22年8月期の売上高は616億ドル(約8兆円)と、前期比2割超の大幅増収を果たした超成長銘柄でもある。
実は、この好調の立役者こそ、日本に他ならない。何しろ、直近のアニュアルレポートでは、「日本、ブラジルとオーストラリアが収益の伸びを牽引した」と名指しされているのだ。
コンサル領域の上流(戦略)からシステム構築などの下流まで、一気通貫で担う総合系ファームの中でも、アクセンチュアは以前からIT分野が強みだ。コンサルタントのみならず、エンジニアやプロジェクトマネジャーなど多様な人材を抱え、競合の「BIG4」(デロイトトーマツ、PwC、EY、KPMG)と差別化を図ってきた。
さらに、IT実装まで手掛ける部隊を急拡大し、SIer(システムインテグレーター)にも侵食の度合いを強めてきた。ITコンサルの引き合いが強い昨今だけに、地続きの領域であるシステム構築が生業の国内ベンダー勢の脅威と化すのは時間の問題だったといえる。
だが、実は、矛先は決してこうした分野にとどまらない。アクセンチュアは、電通をはじめとする広告代理店、さらに総合商社の伊藤忠といった異業種の事業会社までもが、強烈にその存在を意識せざるを得ないほどに業容を拡大している。従来の常識では考えられないほど、広範な領域に“戦線”を築くに至っているのだ。
22年8月期まで8期連続2桁増収を遂げた勢いそのままに、昨年11月には日本法人として初めて上場企業の買収を完了した。400億円超を投じてビッグデータ解析などを手掛けるALBERTを傘下に収めたのだ。なぜ、提携ではなく買収だったのか――。実は、そこには全方位戦を進めるアクセンチュアの明確な狙いがある。
次ページでは、多方面に手を広げ急膨張するアクセンチュアの今を、ライバル軸の視点でさらに踏み込んで解説。またダイヤモンド編集部が集めた日本法人の直近の財務データを示すとともに、ALBERT買収の「真の狙い」に至るまでを一挙に明らかにしよう。そこからは、コンサルのBIG4のみならず、伊藤忠や電通などとも仁義なき戦いを繰り広げる、アクセンチュアの猛烈な“領空侵犯”の姿が浮かび上がってきた。