たとえば、鳥の群れ。大空を横切る渡り鳥の群れを想像してみてください。大きく分けて三つの相互作用があの優雅な動きを決めています。
1 他の鳥や障害物と一定の間隔を取るように動く
2 周りの鳥と速度と方向を合わせるように動きを調整する
3 群れの重心に少し近づくように動く
こうした相互作用があるだけで、群れをつくるルールのような命令系統はどこにも存在しません。
人間という生き物も、何十億年もかけた壮大な進化の先っぽに存在しています。単細胞から多細胞へ、脊椎動物から哺乳類へと自己組織化していったのです。誰かが(たとえそれが神様でも)、トップダウン的に「こうあれ!」と命令したとしても生み出すことのできない驚異的な秩序の現れです。生きて在ることそのものが、そもそも貴重な存在です。
二つ目の「散逸系」は、前述の自己組織化現象において、動的な安定を指し示す言葉です。インプットとアウトプットをし続けながら、特に動的に安定しているものを表します。ノーベル化学賞を受賞したイリヤ・プリゴジン(1917〜2003)が定義したもので、ダイナミック(動的)でありながら、ステイブル(安定)である「Dynamically Stable」という概念です。
わかりやすい例を挙げましょう。沸騰したヤカンのお湯です。火からの熱量(インプット)を得て、湯気を通した熱量(アウトプット)を出し続けることによって、ヤカンの熱湯は、渦を描きながら安定するパターン(対流)を形づくります(図5-5)。