オーストラリアの視察で驚いた
サイバー攻撃を早い段階で察知する仕組み
小泉 ChatGPTなどの生成AI(※)が連日、話題になっていますよね。これらの出現によって我々はテクノロジーの新たな可能性を感じていますが、同時にサイバー攻撃が高度化するリスクもはらんでいます。
※コンテンツを生成することのできる人工知能
フェイクニュースもどんどん巧みになるでしょう。偽の情報の拡散は混乱を招き、人々を不安に陥れます。偽の情報にだまされて情報が流出したり、日常を脅かされる人たちが増加するリスクもあります。
誰もがスマホを持っているということは、誰もがこれらのリスクを抱えています。そのリスクはゼロにはできません。でもそうしたリスクを少しでも下げるために、ひとりひとりが意識し、デジタルリテラシーとサイバーリテラシーを上げていく必要があります。一定期間が来たらパスワードを変えるとか、最低限のウイルス対策を行うとか、国民ひとりひとりがそれを日々、意識するだけでもだいぶ違ってきます。
個人のレベル、中小企業のレベル、大企業のレベル、自治体のレベルで、しっかりと意識する。先ほどの病院の例のように、どこから脆弱性(ぜいじゃくせい)を突かれてサイバー攻撃を仕掛けられるか、わからないですから。
もちろん我々、政治や行政の世界でもそうです。もっとサイバーセキュリティに対する意識を高めていかないといけませんし、ひとりひとりのリテラシーを上げていかないといけません。
去年、オーストラリアに視察に行って驚いたことがあるんです。オーストラリアのサイバーセキュリティーを担っている施設を訪れると、そこには、全国民を対象に、デジタル関連で何かあれば、24時間365日いつでも連絡できるコールセンターが設置されてるんです。
私は「え、24時間、何でも?」と驚いて、「例えば、自分のスマホにバグが起きたと、こういうレベルでもかけていいのですか?」と聞いたら、「それでもいいんです」と。サイバー攻撃の芽を早いうちに摘むためには、どんな小さなエラーでも集約して、リスクを測り、対処を考えるんですと。
――なるほど、早い段階でサイバー攻撃の動きをキャッチすることもできるし、国民のリテラシーを上げることもできる。対応する行政や業者側は大変かもしれませんが、対応する側のリテラシーも必然的に上がるし問題点も把握できるので、全体的にサイバーセキュリティの意識の底上げにつながるのかもしれませんね。
小泉 我々はどこか特定の国からのリスクだけでなく、あらゆるリスクを考えて生きなければならない時代に入りました。
リスクというのは残念ながらゼロにすることはできません。そのことを前提に、私たち政治家は、そのリスクが致命的にならないよう、国民の命や生活、財産が不当に脅かされないよう、法律を変え、人を育て、環境を整えていなければならないと思っています。
田原 そこが一番大事で、ゼロリスクのことなんて何もない。特にサイバーセキュリティに関しては、これまで以上に国民はリスクと向き合っていかなければならない。そして政治や行政もそれをしっかりと引っ張っていかなければならない。今の政治家にはこの分野を引っ張っていける人はほとんどいないので、小泉さんにはがんばってもらいたい。
小泉 ありがとうございます。ぜひ見ていてください。