手数料の「往復ビンタ」とは?
仲介事業者の手練手管の実態
これらのケースで、売り主に適切な助言をせずに「2割高く売りましょう」などと言ってくる仲介業者もいるだろう。だが、都合のいい話は「何かおかしい」と思った方がいい。
相手は「あの手この手」で収益を得る方法を知っている、百戦錬磨の不動産屋であることを忘れてはならない。
その証拠に、そうしたリノベーション物件の中古販売を引き受けるのも、両手取引をしている仲介業者だったりする。
いわば、仲介業者はリノベーション事業者の「仕入れ」と「販売」に携わり、その両工程で売り手・買い手の双方から手数料を得ているわけだ。この両手取引の金額は、最大で物件価格の3%×4倍=12%になり得る。
これを業界用語で「往復ビンタ」といい、実現させた営業マンは不動産業界では「仕事ができる人」と評価される。
リノベーション事業者も負けてはいない。各社は安く仕入れた物件を新築に近い見た目に変え、築年数を「若返らせた感じ」を醸し出して素人をそそのかす。それを業界人の中には「ハリボテ」と言う人もいる。
確かに、同じ物件の他住戸よりも見た目はいいし、多少高くても消費者の購入意欲は強くなる。しかし、購入時は新築のような内装の物件も、しばらく住んだ後に中古として売り出すころには「手あかのついた築古物件」になり下がっている。
すなわち、購入者がリノベーション物件を売る際、その取引価格は相場通りに戻っている。「若返らせた感じ」を演出するために、事業者が物件に投じた費用は購入者の「含み損」となり、売るに売れなくなる。
消費者がこのような事態を避けるためには、中古物件を適正価格で買った後、自分でリフォームを手配するのがリーズナブルな方法となる。水回りの交換と、クロスや床の張り替えを依頼すれば、内装を新築のようにして気持ちよく住み始めることができる。リフォームの見積もりサイトはいくつもあるので、価格の面でも納得感を得られる。