2月15日から2日間にわたってモスクワで開かれた主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)は、「競争的な通貨安を回避する」との声明を採択して幕を閉じた。

麻生太郎財務相(中央)は日本の経済政策について「一定の理解を得られた」と胸を張ったが、その後19日には閣議後の会見で、日銀の外債購入を否定した
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 ここ2年ほど、G20のテーマは専ら欧州債務問題が中心だったが、今回のそれは「通貨安競争」。背景には、昨今の急激な円安がある。

 G20の会場で「スピードオーバーという言葉が飛び交った」(G20参加者)ように、開催前から「円について議論する可能性が高い」(カーニー・カナダ中銀総裁)、「日本銀行の金融緩和はいくつか問題を生み出した」(金仲秀・韓国中銀総裁)と円安を問題視する声が出ていた。そのためG20では日本が名指しで批判される懸念もあったが、それだけは免れた格好だ。

 そもそも日本の政策を「通貨切り下げ」と決め付けるなら、それは言いがかりに近い。この3カ月、財務省は為替介入を実施したわけでもなければ、日本銀行も欧米の中央銀行と同じ2%のインフレ目標を導入しただけ。むしろここ最近の円安要因は、「欧州債務問題への対応の進捗」(白川方明・日銀総裁)などを背景に、投資家のリスク回避姿勢が後退したことが大きいというのが、国内外を問わず市場の一致した見方だ。

 とはいえ、日本が批判されても致し方ない部分もある。為替市場への“口先介入”だ。ブレイナード米財務次官は今回、「為替に関する無規律な発言を慎むことが重要」と釘を刺した。

 総選挙後の日本では、「85~90円にどうやって収めるか考えなければならない」(石破茂・自民党幹事長)、「(1ドル=100円でも問題ないとの見解について)私自身の認識も共通している」(西村康稔内閣府副大臣)と、政治側が為替水準やレンジにまで言及。「石破レンジ」といった言葉が為替市場で使われるほど影響力は大きかった。