この「正しいのかどうか」について今回の記事では、三つの異なる説明を皆さんに聞いていただき、そのうえでどういうことなのかを一緒に考えていただければと思います。

アメリカのディズニー本社から見ると
日本のディズニーは「ほぼ値上げしていない」

 まず一番目の説明は、為替の視点です。ドルで見た場合と円で見た場合で東京ディズニーリゾートのパスポートの価格がどう変化しているのか、グラフにしてみました。

 赤色で示したドル価格を見てみましょう。東京ディズニーの料金は2011年、2012年頃には78ドルと高い水準を維持しました。しかし、そこから2015年までずっと価格は右肩下がりに下落。57ドルまで下がっていたことがわかります。

 この現象の原因は、為替です。2011年と12年は1ドルが79円台という円高の時代だったのが、2013年以降1ドル=100円~110円のレンジに為替レートが戻ったため、アメリカ人にはこのように見えるのです。

 パスポートの料金が頻繁に値上げされるようになったのは2014年からなのですが、背景には、この「ドル建て価格の下落」があったことは間違いありません。

 なぜなら、東京ディズニーリゾートからライセンス収入を得ているアメリカのディズニーにとってはドル建ての収入こそが重要で、パスポートの価格が(ドル建てで見て)デフレ傾向になってしまうのは困るのです。

 今度は青色で示した円価格を見てみましょう。頻繁な値上げをしているものの数百円単位の値上げであるため、コロナ禍前の2019年まではパスポート価格はほぼ横ばいで推移しています。

 ディズニー本社は、このような小さい幅の価格調整では満足できなかったことでしょう。結局それまでの7400円程度の価格を、2020年に8200円、21年に8700円と大幅に値上げしたことで、ドル建ての価格はようやく2012年当時の水準まで戻ったのです。

 ところが2022年になって再び、アメリカのディズニー本社の気持ちをざわつかせる事態が起きます。円安です。

 昨年の平均為替レートは1ドル=131.50円です。このレートで計算すると、21年からさらに値上げをして9400円になったパスポート価格はドル建てベースで見ると下落しています。そして直近の為替レートは1ドル=144円台に突入しました。この円安水準では、実は1万900円に値上げした新価格でもアメリカから見れば、価格は2021年よりも低い水準なのです。

 つまり、一番目の説明をすると、驚くべきことに東京ディズニーリゾートのパスポート価格は、アメリカのディズニー本社からみれば全然値上げされていないように見えるのだということです。