ECBラガルド総裁政策理事会後の記者会見に臨むクリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁 Photo:picture alliance/gettyimages

タカ派色を強めるECB
引き締め過ぎの懸念も高まる

 欧米先進国の利上げの動きが止まらず、市場は戦々恐々としている。

 6月を振り返っても、米連邦準備制度理事会(FRB)の据え置きと欧州中央銀行(ECB)による0.25%の利上げは織り込まれていたが、英国の利上げ幅は予想を上回る0.5%となり、カナダでも据え置き予想を覆す利上げが行われた。

 同時にいずれの中銀もデータ次第で利上げを続けると宣言した。また、早期の利上げ打止めや利下げ転換を期待する市場を強く牽制するタカ派的な情報発信も行っている。

 共通するのは、インフレ対応が後手に回った結果、長年にかけて漸く確立したインフレ期待の低位安定と中央銀行への信認を「ここで失うと取り返しがつかない」という強い危機感だ。

 このためインフレは今後低下に向かうと引続き予測をしながらも、実績ベースでの賃金とインフレの落着きを確認しないと引締めを止められないという状況に追い込まれてしまっている。

 こうした状況をみて心配になるのが、事後的にみて金融引締めがやり過ぎになってしまうリスクだ。リスクの大きさは中央銀行によって異なるが、特にECBが心配だ。

 最大の理由は、同じように下げ渋っているインフレの背景を仔細にみると、米国や英国と比べてユーロ圏のインフレは供給要因が主導する色彩が強いためだ。