FRB「早期利下げ」予想の根拠、インフレ率低下が招く実質金利上昇と景気減速Photo:PIXTA

FRBは6月のFOMCでは利上げを見送ったが、年内の追加利上げを示唆している。しかし、インフレ率が低下する過程での政策金利高止まりは実質金利上昇を招く。それは過度に景気を冷やすことになりかねない。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

6月は政策金利据え置きもパウエル
議長は年内追加利上げを示唆

 6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げが見送られたが、他方、FOMCメンバーのFF(フェデラルファンド)金利見通しにおいては、年内2回の追加利上げが行われることが示唆されている。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は6月21日の米下院金融委員会で「金利は年末までに幾分高くなると当局者はみている」と証言し、つまり、7月以降に利上げが再開される可能性が高いことを示唆したが、ただ、議長自身は5月FOMC以降、さらなる利上げに対して慎重な姿勢を示すことが多くなった。

 FRBの副議長に指名されたジェファーソン理事らも同様に慎重な姿勢を示している。6月21日にはアトランタ連銀のボスティック総裁も「一段の利上げを正当化するハードルは数カ月前に比べて高くなっている」と、追加利上げに否定的な姿勢を示した。

 興味深かったのはボスティック総裁の「インフレ鈍化に伴い、実質金利が上昇するため、金融政策は事実上一段と引き締まる」との発言である。

 6月のミシガン大学消費者信頼感調査では1年先インフレ期待が5月の4.2%から3.3%に急低下したのだが、FF(フェデラルファンド)金利からこのインフレ期待、あるいはインフレ率そのものを差し引いた後の「実質金利」はここもとプラスに転じてきており、既に金融政策が引き締めステージに入ってきていることを示唆している。

 ボスティック総裁は、今後さらにインフレ期待やインフレ率が低下すれば、FF金利を引き上げなくても実質金利が上昇することを指摘しており、そのことは将来の利下げ開始が早まることもまた示唆している。

 次ページ以降、6月FOMCにおいて示された見通しについて触れ、今後の金融政策動向を予測したい。