杉並区議会で起こっている「波乱」

 わたなべ議員が所属する東京都杉並区では、22年6月の杉並区長選で、立憲民主党や共産党などの推薦を受けた岸本聡子氏が、自民党・公明党の推薦を受けた現職・田中良氏を187票差という僅差で破った。

 数少ない女性区長であり、同区では今年4月の選挙を経て、女性議員が男性議員の数を上回った(女性24人、男性23人、性別非公表1人)こともあり、女性議員の少ない日本での先駆けとして期待を込めた見方があった。

 一方、議席を減らした保守派議員からは強い反発があり、特に5月に行われた議長選挙では、最大会派(自民党系)が支持した男性議員ではなく、共産・立憲民主が支持した女性議員(井口かづ子議員)が1票差で選ばれた後に複数の議員が議場に現れず、混乱があったことが報道でも取り上げられている。
<参考記事:「波乱の幕開け」となった杉並区議会議長、選出めぐり自民「混乱しております」(亀松太郎/5月22日)

 この件について、「区長・井口氏・区長派の議員たちで考えた戦略が見事成功した、と考えるのが自然でしょう」「20年間も自民党にお世話になって(恐らく無所属なら当選していないでしょう)、それは無いでしょう?井口さん…。」とブログで不快感を示したのは小林ゆみ議員。
<参考記事:杉並動物園へようこそ(小林ゆみ/6月17日)

 小林議員は、「ブックオフ」ツイートのわたなべ議員の妻である。また、6月の議会で、「避難所に生理用品は置いているのか」という趣旨の質問を区長派議員が男性の担当職員に繰り返し質問したことを「セクシャルハラスメントに当たるのではないでしょうか」と問題視したことでも議論を呼んだ。
<参考記事:「恥ずかしい」ことはおかしいの?(小林ゆみ/6月22日)

文脈から切り離される140文字

 杉並区議会にはこのような経緯・背景があることを踏まえると、もともとのわたなべ議員のツイートも、男女平等推進センターの取り組みに懐疑的であることは想像に難くない。

 その上で「ブックオフで買ってきました!!」とツイートすれば、「このような書籍を新刊の価格で購入する価値を感じていない」という意思の表明と受け取る人がいても仕方ないだろう。

 一方、経緯やわたなべ議員のツイートを知らずに「ブックオフ購入」議論だけを見た人の中には、なぜブックオフで本を購入すること、あるいはそれをSNSで言ってはいけないのか、わからないと思った人もいたようだ。

 ツイッターの140文字は、その文脈や経緯を知らずに共有されることも多いため、あらぬ誤解や、本来必要のない対立を生むこともある。改めてSNSの使い方の難しさを知った一騒動でもあった。