物価上昇率、想定以上に高止まり
「緩和維持」に世論に変化の兆し
米欧では、政権や中央銀行の新体制がスタートした後、100日間――いわゆるハネムーン期間――には、変革への期待が高い支持率につながることも多い。
植田和男総裁の下、日本銀行の新体制は今やこうしたハネムーン期間を終えつつある中で、世論の期待感に変化の兆しも見られるようになってきた。
最大の理由は、消費者物価上昇率が想定以上に高止まりし、名目賃金の折角の増加にかかわらず実質賃金の減少率がむしろ拡大するなど、多くの家計にとって生活実感が好転しないことが考えられる。
再び強まった円安圧力も企業によるコストの価格転嫁を長期化させるだけに、家計には事態の改善が見いだしにくい状況にある。
もちろん、これら全てが日銀の政策運営に起因するわけではない。コストを価格に転嫁することは、企業には適切な利潤の確保に必要であり、経済全体でも生産性上昇率が低いままなので、企業がコスト上昇をマージンの圧縮によって吸収する余地は小さい。
金融市場では、主要国で日銀だけが強力な金融緩和を維持していることが円安を招いているとの見方も強いが、米欧の中央銀行が予想以上にタカ派姿勢を維持していることが円相場を下押したことも否定できない。
だが7月に公表される展望レポートでは消費者物価の見通しは再び上方修正される可能性が高い。植田総裁の「コミュニケーション能力」が一段と問われる局面だ。