セブン-イレブンPhoto:Diamond

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、コロナ禍によって大打撃を受けた業界・企業の業績の完全復活に対する期待が高まってきた。上場49社、15業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業の再起力において明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移を基に、「嵐」から「快晴」まで6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「月次で明暗!業界天気図」。今回は、2023年6月度のコンビニ編だ。

セブン-イレブンは本当に好調か?

 コンビニの主要3社が発表した6月度の月次業績データは、以下の結果となった。

◯セブン-イレブン(セブン&アイ・ホールディングス〈HD〉)の既存店売上高
 6月度:前年同月比103.6%(3.6%増)

◯ファミリーマ—トの国内既存店売上高
 6月度:同104.4%(4.4%増)

◯ローソンの国内既存店売上高
 6月度:同103.9%(3.9%増)

 3社とも前年同月に比べて増収している。ただし、大きな差は見られない。

 近年のコンビニ業界を振り返ると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響をあまり受けなかったことが特徴だ。外出自粛の逆風と同時に、巣ごもり需要という追い風も吹いた。また、かねて各社ともプライベートブランドの商品開発に力を入れ、利便性だけでなく、高品質な商品の提供に努めてきた。

 とりわけ高付加価値路線を訴求し続けてきたのが業界最大手のセブン-イレブンだ。プライベートブランド「セブンプレミアム」では、独自に開発した総菜を数多く展開し、時にナショナルブランドよりも高い値段で販売してきた。

 そんなセブン-イレブンを傘下に持つセブン&アイHDが、経営問題で揺れている。大株主の米ファンド、バリューアクト・キャピタルがいわゆる「物言う株主」で、セブン&アイが持つ百貨店事業(そごう・西武)やスーパー事業(イトーヨーカ堂やヨーク)のリストラクチャリングを迫っているのだ。

 一方、この米ファンドは、セブン-イレブンの収益性や成長性については高く評価している。だからこそ、セブン&アイ経営陣に対して「コンビニ事業に集中して経営資源を投じるべき」「その原資を捻出するためにも、百貨店やスーパーを売却せよ」と主張しているわけだ。

 では本当に、セブン-イレブンは優秀なのだろうか? 今後も業界王者として君臨し続けられるのだろうか? その端緒を探るために、23年6月度の数値だけでは見えない、コロナ前との業績比較や、過去3年分の月次動向を分析して、真の「コンビニ王者」かどうか確かめてみよう。