都市や街に溶け込みつつあるビジネス

 MEGAは国道沿線などの郊外やターミナル駅近くに建てられているのですが、ここからもわかるように、その周辺に住んでいるファミリー層の需要を見込んでいるわけです。注目すべきは、その数がどんどん増えていること。すでに全国に百店舗以上はありますが、その原動力は、2007年に「長崎屋」を買収したことにあります。

 長崎屋は、かつて日本に多くの店舗を持つ一大スーパーチェーンでしたが、ドンキに買収されてから、長崎屋を居抜く形で多くの店がMEGAに変わっています。もともと、郊外に多く立地しており、店舗面積が広かったこともあって、そのまま居抜けばMEGAのサイズになる店舗が多かったからです。

 ドンキ創業者の安田は『情熱商人』のなかで、MEGAについて興味深いことを述べています。安田は「過去の成功の延長に今後の成功はない」という信念のもと、「『従来型ドンキ』の役割は終わりかけている」というのです。その背景には、「ピュア・ドン・キホーテ」と呼ばれる従来型のドンキ業態が安定期に入ってきたことがあります。安定することが、逆に経営を危うくさせるのではないかと予想し、その状況を打開するための戦略として新業態であるMEGAの重要性を説いています。

 こうした安田の発言を踏まえると、今後はMEGAのほうに経営の重点が置かれることが予想されます。執筆段階ではドンキの詳しい中長期経営計画はあきらかになっていませんが、ファミリー向けのMEGA業態が拡大していることからもわかるように「ドンキ=ヤンキー・DQN」というイメージは事実としては過去のものとなり、むしろあらゆる人に開かれた業態へと変わりつつあるのです。いうなれば、都市や街のなかに溶け込んできたわけです。