八王子のドン・キホーテPhoto:PIXTA

かつて、ヤンキーのたまり場とのイメージも強かった「ドンキホーテ」。だが現在では、あらゆる人に開かれたチェーン店へ進化している。その戦略の一つ「MEGA・ドンキホーテ」についてチェーンストア研究家が解説する。

※本稿は、谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

ファミリー需要を生み出したMEGAドンキ

 MEGAとはなんでしょう。流通コンサルタントである月泉博は、創業者・総合ディスカウントストア、ドン・キホーテの創業者安田隆夫との共著『情熱商人』でこのように記しています。

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 ドンキとMEGAは同じ「ドン・キホーテ」という名前がついていて、業態分類的にはどちらも総合DS(引用者註 : ディスカウントストア)に属するが、両者のターゲットとMD(マーチャンダイジング。 引用者註 : 経営の仕方のこと)、業態構造はまるっきり異なる。(中略)

 ドンキの主力ターゲットは20~30代のシングル族やノーキッズカップルで、彼らの夜型パーソナル利用が主体だ。対するMEGAは、これまでのドンキにはあまり来店しなかったファミリーや中高年層を含むオール世代がターゲットで、どちらかと言えば昼型のファミリー利用に対応している。加えて店舗面積も、ドンキが30~1000坪に対してMEGAは10000坪だ。
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 つまりドンキとMEGAの大きな違いとして「ターゲット層」と「店舗面積」の二つがあることがわかります。

 ここで注目したいのは前者のターゲット層です。面積が大きいぶん、ヤング層だけではなく、ファミリー層にも対応した、いわゆる「ふつうのスーパー」のような側面も持っているのがMEGAの特徴です。渋谷本店は地下1階がスーパーのようになっていましたが、この店舗もMEGA業態です。また、港山下総本店も、スーパーでよく見られるような冷凍食品を格納する什器がずらりと並び、その周りに大量に貼られたポップやけばけばしい張り紙を見なければ、そこがドンキであることを忘れてしまいそうなぐらいです。