さらに、薬の服用を途中で放棄するのは、次のようなタイプに多いそう。

「便秘度が強で、かつ、怖がり屋さんに起こりがちです。便が全く出ない患者さんの苦しみは凄まじいので、前述した麻子仁丸のような強い薬を使う場合もあります。薬には便を軟らかくし、腸の動きをよくする作用があります。薬が効いてくると、たまっている便を無理矢理、押し出そうとするので、便秘の人にしたら、経験したことのないほどの強烈な痛みに感じてしまうんですね。

 その痛みが服用を止めるほどの恐怖になるんですが、ここを越えて欲しいんです。最初は溜まりに溜まった便を出すのでつらくて痛いでしょうが、ちゃんとリズムが整えば、そこまで痛くはなくなりますから、医者を信じて、毎日飲んでください。最初が頑張り時です」 

 一口に便秘と言っても、症状は千差万別だそう。患者ひとりひとりに合わせた“オーダーメイド治療”となるので、さじ加減が何より大事。確実に快復のステップを踏む上でも、患者と医者の協力体制は欠かせない。

1回目の下痢編で詳しくご説明しましたが、来院の際には、便事情を把握するために『ウンコ一日誌』をご持参ください。〇日の〇時にどのくらいの量の便が出たか、痛みはどの程度かといったメモ程度の記録でも診断の手がかりになるからです。

 服用後、『7日に1回だったお通じが4日に1回になった』ということならば、その薬は効いているということ。現状を正しく把握した上で次の手が打てます。『1日3回飲んで、便は出るようになったが、逆に毎日2~3回は下痢になる』ということであれば、効果あり!ですが、効きすぎなので、1日1回に減らそうという提案もできるわけです。症状が快方に向かっているのかが皆目わからない、あるいは『いいような気もするが、ダメな日もある』という方ほど、ウンコ一日誌を付けて、医者と一緒に一日一便を目指しましょう」

便秘と下痢を繰り返す
“ハイブリット患者”の心得

 また、石黒医師は便秘と下痢を繰り返す“ハイブリット患者”にも温かいエールを送っている。

「便秘と下痢を繰り返すタイプの患者さんも、これまでお伝えしてきたような生活習慣の改善が急務です。それでもなかなかよくならない場合は、消化器内科を頼りましょう。ウンコ一日誌をご持参いただければ、医者は下痢と便秘のどちらが優勢かを判断して、よりつらいほうの治療を優先します。下痢が強ければ前回、登場したイリボー、ラックビーといった薬で下痢を治療しながら、同時に便秘にならないように薬の量を絶妙に調整していくのです。

 確かに、お腹のトラブルは一朝一夕に完治とはなりにくいかもしれません。しかし、ご自身で“我が身の法則”をきちんと見つけ出せれば、あとは医者との二人三脚あるのみです。僕たち医者と共に頑張って治していきましょう」

 次回は「医者に行くべきタイミング 」をお伝えする。


【監修】石黒智也(いしぐろ・ともなり)

「巣ごもり便秘」がコロナ禍で増加、医師が教えるリスクと「一日一便」への道

 日本内科学会認定内科医/同・総合内科専門医/日本消化器病学会専門医/日本消化器内視鏡学会専門医/H.pylori感染症認定医/日本がん治療認定医機構 がん治療認定医/日本消化管学会胃腸科専門医/緩和ケア研修 修了医。1979年、岐阜県生まれ。2005年、岐阜大学医学部卒業。総合病院での一般内科、消化器内科、救急医療の研修を経て、胃・大腸内視鏡検査及び治療件数で全国有数の昭和大学横浜市北部病院・消化器センターに入局。「痛くない、つらくない」内視鏡の挿入法などを徹底的に学ぶ。2016年、神奈川県茅ヶ崎市にて「湘南いしぐろクリニック」開設。現在、「新横浜国際クリニック」「湘南いしぐろクリニック 鎌倉院」と合わせて3施設の医院を運営する医療法人社団MBSの理事長を務め、早期がんの発見やお腹のトラブル撲滅のため、日々研鑽を積んでいる。趣味はプロ野球観戦、サーフィン、カラオケ。医大生時代は本気で芸人を志したこともあり、お笑い番組も大好き。