眼鏡店「メガネスーパー」を運営するビジョナリーホールディングス(VH)が5月に公表した調査報告書で、「企業価値を毀損(きそん)する行為」を行ったと指摘されたVH前社長の星崎尚彦氏が、ダイヤモンド編集部の独占インタビューに応じた。報告書の指摘について星崎氏は「事実と違う」と全否定し、調査に至る一連の動きは、VH筆頭株主の医療IT大手エムスリーが自身を排除するために仕掛けた「陰謀」だと主張。谷村格エムスリー社長の不透明な株取引や監査法人への圧力疑惑など、騒動の舞台裏について初めて明かした。インタビューの前・後編、検証編の計3本で衝撃告発の全貌をお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史、フリーライター 村上 力)
「プロ経営者」の星崎氏が突然失脚
その裏に隠された衝撃の事実とは?
星崎尚彦氏は1989年に入社した三井物産でMBAを取得。99年に退社後、スイスの宝飾品やイタリアの靴ブランド、米国のスノーボードメーカーなど外資系企業の日本法人代表を渡り歩き、アパレルメーカーの「クレッジ」では11年の代表就任から1年半で経営のV字回復を果たし、事業再生を請け負う「プロ経営者」として知られるようになった。
メガネスーパーの再建を託され、同社社長に就任したのは13年のことだ。メガネスーパーは07年のピーク時に540店舗、380億円の売り上げを誇ったが、「JINS(ジンズ)」や「Zoff(ゾフ)」など価格表示が均一で低価格な新興勢力に顧客を奪われ、08年から営業赤字に陥っていた。
星崎氏は不採算店の閉鎖や低価格路線の修正など改革に取り組み、16年に9年ぶりの黒字化を達成。17年にビジョナリーホールディングス(VH)による持ち株会社体制に移行し、星崎氏はVH初代社長に就任した。
だが、22年12月19日、プロ経営者としての星崎氏のキャリアが突然暗転する。この日、VHの会計監査人だったPwCあらた監査法人が設置するホットラインに、匿名の通報が寄せられたのだ。
その内容は、星崎氏が関わる「星組関係会社」との取引に関する疑義、それと星崎氏の経費私的流用に関する疑義を指摘したものだった。通報には、22年7月1日~8月20日の間の星崎氏の行動記録や写真も添付されていた。
この通報を受けて23年1月10日、VHの監査等委員会が調査開始を決議し、事前調査委員会が発足。さらに3月7日、外部弁護士による第三者委員会設置が発足し、星崎氏は同日付で辞任した。
そして5月31日、第三者委員会による調査報告書が公表された。
この間、星崎氏は公に発言することはなかったが、今回、ダイヤモンド編集部の取材に初めて応じ、報告書で指摘されたさまざまな疑義に反論した。そしてVHの筆頭株主である医療IT大手、エムスリーに対する衝撃の告発を語り始めたのである。
――調査報告書が公表された後、星崎さんがメディアのインタビューに応じたのは初めてとのことですが、なぜこのタイミングで公に話そうと考えたのですか。
相手が何を言ってくるのか分からなかったものですから、まずは手の内を、全部じゃないかもしれませんが、ひとしきり見た後に主張すべきだと思ったからです。
僕は事前調査委員会や第三者委員会、VHの顧問弁護士によるヒアリングに何度も応じています。その際、僕の主張は全部言いましたが、報告書には全く反映されていない。ですから「これではいかん」と。ちゃんと自分の主張を第三者の方に伝えなければならないと思いました。
――星崎さんとしては、調査報告書は事実と違う点があるとお考えですか。
たくさんあります。
VHは20年2月に(医療IT大手の)エムスリーの出資を受け入れ、エムスリーが筆頭株主となっています。そのエムスリーは、VHを100%子会社にしたいという強い意志を持っていて、今回の一連の騒動は、僕を排除するエムスリーの陰謀だと思っているのです。
その根拠を、これから明らかにしたいと思います。