検診結果に明示されないところもあるので、ぜひ技師に自分の乳房の状態を確認することをオススメします。

 高濃度乳房でマンモグラフィの真価を発揮できない場合は「乳房の超音波検査」(以下、乳房エコー)も追加で行っておきましょう。高濃度乳房の影響を受けにくい検査です。

 乳房エコーも胃がんのピロリ菌と同様「まだはっきり死亡率を下げたエビデンスがない」ため対策型検診には含まれておらず、「任意型検診」の扱いになっています。

 ただ、約7万3000人の日本人女性のデータを対象にした研究では、早期乳がんの検出率を上げたという報告も出てきています(※5)。全員が行うべきとは思いませんが、個人的には「高濃度乳房」のリスクが高い人こそ、現段階では乳房エコーも追加して行うほうがいいのではと考えています。

遺伝に要注意!

 最後に、乳がんは遺伝の要素が非常に強いがんです。「BRCA1、BRCA2」という遺伝子に変異が起きていると乳がん、そして卵巣がんのリスクが上がります(※6)。

 2013年に女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが自身の乳房を切除する手術を受けたことが話題になりました。彼女もこの「BRCA1」の遺伝子変異が起きていて、乳がんのリスクが非常に高いため、乳房を切除してリスクを下げる選択をしたのです。日本でも2020年から一部の遺伝子変異がある人の乳房切除は保険適用となっています。

 乳房切除を行うかどうかは見た目の問題など、個人の価値観にかなり左右されますが、母や祖母が乳がんの方は一段階も二段階もギアを上げて警戒してください。

 基本的には40歳を越えたら2年に1回のマンモグラフィ検診を受けて、もし「高濃度乳房」という指摘があった場合は乳房エコーの検査を検討するのが乳がん検診のベストチョイスでしょう。

【出典】

※1 厚生労働省国民生活基礎調査 2019年版
※2 Chisato Hamashima ,et al. A meta analysis of mammographic screening with and without clinical breast examination. Cancer Sci. 2015 Jul;106(7):812 818.
※3 Boyd NF, Martin LJ, Yaffe MJ, Minkin S. Mammographic density and breast cancer risk current understanding and future prospects. Breast Cancer Res. 2011 13 6 223.
※4 Kotsuma Y, Tamaki Y, Nishimura T, Tsubai M, Ueda S, Shimazu K, et al. Quantitative assessment of mammographic density and breast cancer risk for Japanese women. Breast. 2008 17 1 27 35.
※5 Noriaki Ohuchi,et al. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti cancer Randomized Trial(J START): a randomised controlled trial. Lancet. 2016 Jan 23;387(10016):341 348.
※6 Chen S, Parmigiani G. Meta analysis of BRCA1 and BRCA2 penetrance. J Clin Oncol.2007 25 11 1329 33.

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)