樹齢五百年の大柊だけが知っている?

 今日、本門寺にある信長の首塚と伝わる場所には、それが墓標でもあるかのように、柊の大木(静岡県指定の天然記念物)が立っている。その案内板には「推定樹齢五百年。炎上する本能寺から持ち出された信長の首がここに運ばれ、埋められたときに植林された……云々」といった意味のことが記されてある。

 この柊、植林されたときにどれほど年月がたっていたかわからないが、約500年前と言えば、本能寺の変の頃とほぼ一致する。柊は特徴的な棘(とげ)のある葉をつけることで知られる常緑樹。そこから日本でも西洋でも古来、「魔除けの木」として認識されている。この首塚を守るにはうってつけの樹木であろう。

 しかしながら、この西山本門寺説にしても、墓を掘り起こして調査したわけではないので、本当に信長の首が埋まっているかどうかは謎である。それに、首が本能寺からどうやって持ち出されたのか、もう一つはっきりしていないのも問題だ。

 戦闘と炎上で現場は大混乱をきたしていたとはいえ、首3つを持って敵の重囲(じゅうい)を見事に突破できたとはどうしても考えにくいのだ。こちらの説に関しても、説を補完し、大方の歴史ファンから納得が得られる新説の登場を待ちたいものである。