経済活動が正常化でも増える倒産、飲食業は「過去最多」の可能性、背景に何があるのかAERA 2023年8月7日号より

 サービス業の中でも、特に深刻なのは飲食業だ。今年上半期における倒産件数(負債1千万円以上)は424件で、前年同期比78.9%もの大幅増となった。上半期ベースで見ると、過去30年間における最多記録を更新。今後も同じようなペースで推移すると、8月にも昨年年間倒産件数(522件)を突破する可能性が考えられる。

「コロナ禍で飲食業は、休業・時短協力金や各種支援金などの手厚い支援に支えられてきました。しかし、売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」(坂田さん)

ゼロゼロ融資も影響

 コロナ禍初年となった2020年、緊急事態宣言などのあおりで飲食業の倒産が急増したことは広く知られている。

 東京商工リサーチの調べでは、年間件数が過去最多となる842件に上ったという。2021年以降は様々な支援策によって抑制されてきたが、そういった後ろ盾がなくなって再び悪化している。

 坂田さんによれば、今回の調査で皮肉な結果が浮き彫りになったという。コロナ禍における営業自粛に伴い、やむなく人員削減を実施したすべての飲食店が人手不足に陥っていたのだ。慌てて確保しようとする動きが活発化すれば、おのずと人件費には上昇圧力がかかる。

 しかも、タイミングが悪いことに「ゼロゼロ融資」の返済も始まった。

「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売り上げが激減した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の貸し出しだ。今年上半期にコロナ関連で倒産に陥った飲食業は288件で、前年同期比104.2%増まで膨らんでいる。そのうち、「ゼロゼロ融資」を利用後に倒産したのは52件。延々と返済が続くだけに、今後は「ゼロゼロ融資」に起因する倒産がさらに増えていくのは必至だろう。

「コロナ禍以前から融資を受けていたケースも考えられますし、そうなると返済の原資を工面するのは大変でしょう。年間を通じた飲食業の倒産件数は、過去最多記録を更新する可能性があります」(坂田さん)

(経済ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2023年8月7日号より抜粋

AERA dot.より転載