ノーベル化学賞を
受賞した鈴木章
北海道中南部の太平洋に面し、人口17万弱で道内4番目の苫小牧市。工業都市、港湾都市だ。この地に根ざす伝統校が、北海道立の苫小牧東高校だ。ノーベル賞学者を出す一方、オリンピアンを多数輩出し、文武両道を体現している高校だ。
生徒、教職員、同窓会OB・OG、それに苫小牧市民は、卒業生の中からノーベル賞受賞者が出たことを、誇りに思っている。
北海道大ユニバーシティプロフェッサー・名誉教授の鈴木章(1930年9月生まれ)だ。シシャモで有名な北海道鵡川村(現むかわ町)の生まれで、母親の行商で支えられた苦学生だった。
鈴木は旧制時代の苫小牧中学に入学。卒業したのは1949年で、新制の高校1期生卒だった。北海道大理学部化学科―同大学院と進み、1961年には合成化学工学科の助教授に、73年には教授になった。北大での勤務は35年に及んだ。この間、米パデュー大などに留学した。
2010年にノーベル化学賞を受賞した。すでに80歳になっていた。「鈴木カップリング反応」の発見が評価された。有機分子を連結する優れた反応で医薬品や液晶材料など、高い機能を持つ有機分子の合成に広く利用されている原理だ。文化勲章も授与された。
「希望や理想は与えられるものではなく、自分で考えて実現していくものです」という鈴木語録が知られている。