WTI原油先物価格は80ドル台に上昇
産油国は減産姿勢を改めて強調
WTI原油先物価格は、2023年入り以降、1バレル60ドル後半から70ドル台で一進一退が続いた後、8月9日には終値で一時84.4ドルまで上昇し、昨年11月16日以来の水準に達した。主要産油国のサウジアラビアが自主減産を9月まで延長し、ロシアも足並みをそろえる形で輸出の削減を延長したため、原油需給が逼迫(ひっぱく)するとの懸念が高まったことが背景にある。
産油国では、これまで複数回にわたって追加減産や自主減産を実施し、原油供給を抑制する姿勢を強めてきた。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国で構成されるOPECプラスは、6カ月ごとに定例総会を開催し、定例総会のない期間は2カ月ごとに共同閣僚監視委員会(JMMC)を開くことで、原油の生産目標を決定している。
今年の4月には、サウジアラビアやイラク、UAE、カザフスタンなど主要産油国で日量116万バレルの自主減産を発表し、6月には、それまでの減産方針を2024年末まで延長したほか、サウジアラビアは独自に日量100万バレルの自主減産を7月のみ実施することを表明した。その後、サウジアラビアは自主減産を8月まで延長し、ロシアもこれに同調するように、日量50万バレルの輸出削減を実施することを決定した。
さらに、8月には、冒頭に触れた通り、サウジアラビアは自主減産を9月まで延長、ロシアも輸出の削減を9月まで延長した。また、これらの減産方針は、8月4日に開催されたJMMCの声明文にも盛り込まれ、OPECプラス加盟国全体で支持された。
産油国がこれまで減産姿勢を強めてきたのは、産油国、特にサウジアラビアが財政収支均衡のために、原油価格が70ドル台を下回る水準での価格定着を避けたいとの考えがあったのだろう。また、足元では、減産に消極的だったロシアが方針転換をしたことで、供給抑制への警戒感が一段と高まり、原油価格に上昇圧力がかかりやすい状況となっている。次項では、これらの背景について説明したい。