生成AI「ChatGPT」を巡るブームを受け、株式市場でもAIが脚光を浴びている。だが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏は、過度な楽観論や悲観論のいずれも否定し、今後の影響を冷静に見極めることが必要だと指摘。本稿では、市場に長年携わっているベテラン投資家の視点で、「AIバブル」の現状をひもとくとともに、関連株への投資を巡る考え方を分析した。
「絶滅事態」か「救世主か」
AIを巡り市場でも思惑
救世主か、破壊者か?生成AI「ChatGPT」の登場が人工知能への熱狂を生んで以降、社会はAIが真に暗示することについて、まだ結論を出せていない。
多くの人は、AIが終末をもたらすマシーンなのではないかと懸念する。富への急行券だと下心を持って見る者もいる――次のドット・コム型ブームだと。どちらなのか?選ぶ必要はない。AIには、機会とリスクがある――だが、ともに誇張されている。
非常に的外れな誤解が、現在の熱狂や恐怖の一因だ。AIという言葉は、実際のところが善良であれ邪悪であれ、SFのロボットを想起させる響きがある。現実はといえば、より平凡だ:AIは単に「機械学習」を指す――過去のプログラミングから吸収した膨大なデータに基づいて文章、画像、動画、コンピューターコード、その他のアウトプットを生成するアルゴリズムだ。
ChatGPT――多くの応用の一つ――は、大規模言語モデルという「生成AI」の一種であり、まるで人間が作ったかのような文章を、いとも簡単なコマンドで生成できる。質問に答えたり、文章を書いたりして、賢く思える。だが、実際は、過去のプログラミングの単なる反復にすぎない。
とはいえ、懸念は募る。例えば、AIが作る「ディープフェイク」では、詐欺師が日系企業の香港支社から49億円をだまし取るために、幹部の声を複製したとされる事例などがある。他にも、サイバーセキュリティーを巡る懸念、大阪大学の研究者らによる「心を読む」AIプログラムの倫理的示唆、さらには「バブル」とされるAI投資の数々などだ。
OECD(経済協力開発機構)は、AIが加盟国の雇用の約27%を脅かすと主張する。日本のAI法規制で著作権侵害懸念がないがしろにされる恐れも、別の不安要素だ。米国のあるサイバーセキュリティー担当官は、AIが将来的に人類の「絶滅事態」をもたらすとさえ考える。反対に、AI信者はAIが「世界を救う」と考える――夢想的未来や初期投資家への巨利を示唆する。
どちらの考え方が正しいのか。以降では、「AIバブル」の現状をひもとくとともに、AI銘柄への投資を巡る考え方を分析していく。