米長期金利4.3%超、昨秋の上昇パターンと違うピーク更新の「主役」Photo:PIXTA

米長期金利、昨秋の水準を更新
「利上げ打ち止め観測」とは裏腹

 米国や日本の長期金利がじわじわと上昇する中、8月下旬に開かれた、恒例のジャクソンホール会議で注目されたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演は、直後の金利市場の反応を見ても分かる通り、それほどサプライジングな内容ではなかった。

 今回の会議は、2年に及んだインフレ抑制に中央銀行が成功しつつあるのかどうかが、集まった世界各国の中央銀行関係者や学者らの議論の焦点だった。

 とりわけ市場の最大の関心は、パウエル議長がこの場で何を話すかだったが、議長はインフレ率はピークから下がっているものの、なお高過ぎるとしてインフレ抑制重視の姿勢を続けるとした一方で、労働需給の緩和や賃金上昇の減速など労働市場の正常化の動きにも触れた。

 いわば、追加利上げに動く用意を示しながら引き締め過ぎのリスクにも配慮する両構えといっていい。

 金利市場が反応しなかったのも当然だ。FRBは2022年3月の利上げ開始以降、累計で525bp(ベーシスポイント)もの利上げを実施しており、水準としてはほぼ打ち止めに近いことは既に市場でもコンセンサスになっている。

 しかし、こうした「利上げ打ち止め観測」とは裏腹に8月に入って長期金利は一段と上昇し、米10年債金利は4.3%を超えて昨年秋のピーク水準を更新してきている。

 現在の市場は一体何を織り込もうとしているのか。