雇用の拡大ペース鈍化
ローンの延滞率上昇

 米国では、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ打ち止めへの市場などの期待が高まるのに対し、FRBは追加利上げも辞さずとのかたくなな姿勢を変えず、“対立”が続いてきた。

 実際のところ、インフレ率は減速してきたとはいえ、個人消費支出(PCE)デフレータは総合指数で前年比3.3%増とインフレ目標の2%を大きく上回ったままだ。金融引き締めにもかかわらず、実質GDPはプラス成長を維持している。

 しかし、FRBが利上げ打ち止めへと方針をそろりと変える素地が少しずつだが、整ってきている。

 9月1日に公表された直近の8月雇用統計で労働市場の拡大ペースが鈍化していることが確認できたことと、金融引き締めの効果で消費者向けローンなどの延滞率の上昇が目立ってきていることだ。

 9月下旬に予定されるFOMC(連邦公開市場委員会)での議論が注目されるが、年後半を通じ、雇用などのインフレの判断指標の減速が続く状況になれば、「年内に追加利上げの余地を残す」から「利上げ停止」の新たな局面入りが現実味を帯びる。