コロナショックで見えてきた
都会の脆さ

「東京」から「地方」へ。

 この機運にさらに拍車をかけたのが、2020年に巻き起こった「コロナショック」です。大きな打撃を受けたのは、やはり東京の飲食店でした。飲食店は「日々、お客さまからいただく売上」を運転資金として回しているところが圧倒的多数ですから、ひとたび休業となると、東京特有の「高い家賃」「高い人件費」が重荷となり、経営が苦しくなるお店が多く出ました。

 一方、地方の飲食店の状況はどうか。さきほどご紹介した、輪島市の農家レストランに話を聞いてみると、「たしかに新型コロナウイルスの影響を受けたけれど、結果としては100万円前後の赤字で抑えられた」と答えてくれました。

図_固定費と変動費「固定費」は、売上の大小に関係なくかかる費用のこと。東京は固定費が高いので、売上が減ったときに大きなダメージを受ける。
図:『改訂版 地方起業の教科書』(あさ出版)より 拡大画像表示

 地方の飲食店は「家賃」など「固定費」が安く抑えられているため、休業や営業時間の短縮を強いられたときには「変動費」の調整にのみ力を注げばいい。東京のように「高い固定費に苦しめられる」ことがないため、経営を揺るがすような大きな赤字を避けることができるのです。

「コロナショック」が東京にもたらした変化は、「飲食店の経営危機」ばかりではありません。「東京の通勤風景」の代名詞であった、満員電車。しかし新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、国はテレワークや時差出勤を推奨し、電車は一時期、朝から晩までガラガラの状態が続きました。

 当初は企業側・従業員側に戸惑いも見られたテレワークですが、慣れてくれば「意外と快適」なことを知ります。オンライン通話とメールを使えば、社内コミュニケーションはほぼ網羅できる。「絶対に職場に行かなければ成立しない仕事」だけ、月数回の出社日に行えばいいと人々は気づいたのです。

 2020年5月末に公益財団法人日本生産性本部が行った「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」というアンケートでは、6割以上の人が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えたという結果も出ています。「毎朝毎晩、満員電車に乗って通勤・帰宅することのバカバカしさ」「ICT(情報通信技術)の発達により、職場に縛られずに好きな場所で働けることの快適さ」を、ようやく実感したといえます。