地方はビジネスチャンスの宝庫

「いい風景がある」。それはたしかに素晴らしいことです。しかし下世話な言い方をすれば、風景は「無料」です。観光名所は国や行政の土地であることが多く、「商売」として多くのお金を取ることはできません。

 ただ、少し頭をひねり、その風景に「付加価値」をつけることで、「商売」に育つ可能性がある。これをわかってほしいのです。「ここで夕日を眺めながらビールを飲めるのなら、1000円出してもいい」と私は考えました。仮に、本当にその岬に、ビールを1000円で売るお店があったら、私は喜んでそのビールを買い、お店に感謝さえするでしょう(もちろん私が運転の途中でないことを前提としたたとえ話です)。

 お店側も、ビールを1000円で売れて嬉しいはずです。価値を提供し、価値に見合った対価を払う。これは、ビジネスの本質です。しかしこの「本質」をシンプルに実行できている地方が、あまりにも少ない。多くの地方が、「地方のポテンシャル」を活かしきれていない。裏を返せば、地方は「ビジネスチャンスの宝庫」だともいえるのです。

 地方にはいまだに「箱物信仰」が色濃く残っています。「箱物」とは、テーマパークや博物館といった「人の集まりそうな建物」のこと。ビジネス用語では形あるもの、目に見えるものを「ハード」、無形のものを「ソフト」といいますが、「箱物」はハードといえます。「箱物さえつくれば、人を呼べる」「箱物がないから、人を呼べない」と考えるのが「箱物信仰」です。

 そもそも「箱物信仰」自体がおかしな考え方なのですが、百歩譲ってこの考え方が正しかったとしても、国も地方もお金がない現在、新たな箱物をつくるのは難しいといえます。