実はこれは「地方創生」にもつながる話です。

「テレワークの活用によって、毎日職場に出社する必要はない」。これはつまり、「仕事のために東京に出る必要はない」ということでもあります。地方にいてテレワークで仕事をしながら、たまの出社日に東京に「出張」する。これで十分、仕事は回るのです。

 1日のうち、家族と過ごす時間より職場の人たちと過ごす時間の多い今までのほうが異常だったのです。これからは、いちばんふれあうべき愛する家族と、のどかな景色に囲まれながら、広いスペースで、満員電車に揉まれることなく仕事をすることができる。ストレスは減り、生産性は高まる。こう考える企業や人は多く、「コロナショック」をきっかけとして、「東京から地方へ」の流れはさらに加速しています。「コロナショック」という有事は、東京に住み、東京で働く人たちの価値観やライフサイクルを一気に変えてしまったのです。

地方の人ほど気づいていない
「地方のポテンシャル」

 地方の素晴らしさ。それは何も「コストの低さ」や「人口密度の低さ」ばかりではありません。国内旅行の主な目的を聞くアンケートでは、いつも「美しい景色を見る」「美味しいものを食べる」「温泉に浸かって癒やされる」が上位を独占しています。わざわざ「その土地に行きたい」と思わせる資源が、人間が頭をひねって考えなくても、自然に、そこにあるのです。あとは人間が頭をひねって、「その資源でいかに儲けるか」を考えれば、大きな事業に育つ可能性があります。

 私が視察で、地方をドライブしていた時のことです。夕方、ある岬に立ち寄りました。その岬から見る夕日が素晴らしかった。「ここは本当に日本なのか?」と思うくらいに幻想的な風景でした。美しい夕日を眺め、幸せな気分に浸りながら、お酒が好きな私は「ああ、ビールが飲みたい」と思いました。もちろんドライブ中ですからお酒は飲めないのですが、それでも「ああ飲みたい」と思わせてくれるくらいに素晴らしい景色でした。

 しかしふと周りを見渡してみると、お酒を売っているお店なんて1軒もありません。「ここで夕日を眺めながらビールを飲めるのなら、私は1杯1000円だって払うのになぁ……」と、少しもったいなさを覚えました。夕日を眺めていると、新たなビジネスモデルが次々に浮かんできます。

「ここにソファーを置いて、ゆっくり座りながら夕日を眺められるようにしてもいいな」
「ムードあふれる音楽をかけたら、素敵なデートスポットになるのではないか」
「執事をつけて接客し、高級感を出してもいいかもしれない」

 ところが現実として、その岬の周りにあるお店は、自治体から指定管理を請け負っているお土産屋さんだけ。そのお土産屋さんも、17時には閉まります。

「この岬の素晴らしさは17時からなのに……!」と思いますが、お店にしてみれば「自治体から税金をもらえればそれでよし」なのですから、関係ありません。「岬に訪れるお客さま」のことなんて、まったく考えていないのです。これは決して、この岬に限った話ではありません。日本全国のあらゆる場所で、このような「ポテンシャルを活かしきれていない商売」が多く見られるのです。