夕日と田んぼ写真はイメージです Photo:PIXTA

地方は人口が少ないから、たとえビジネスを立ち上げても成功しない――。地方に対してそんなイメージを抱いている人も多いだろう。しかし、ファーストリテイリングやニトリホールディングス、しまむらなど、現代の日本では地方発の企業が躍進を続けているのもまた事実。地方起業を推奨する事業家・中川直洋氏が語る「地方が秘めているポテンシャル」とは?本稿は、中川直洋『改訂版 地方起業の教科書』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

東京中心主義は終焉?
起業家が地方に注目する理由

 私は三重県明和町出身です。まさに「地方出身者」ですね。

 高校生のころは都会にあこがれ、「将来は大都会で働くんだ」という志を持っていました。私に限らず、地方に生まれ、地方で育った子どもたちの多くは、「地方を離れ、大都会東京で働くのが成功だ」という幻想を抱きます。そしてそれは大人たちも同じ。「東京の大企業で働くビジネスパーソンこそが成功者だ」と考えている人はまだまだ多く存在しています。

 しかし、「東京中心」の時代はもう、とっくに終わっています。

「地方出身者」として東京に出て、30年以上大都会で働き、私が率直に思うことは、東京よりも地方のほうが、圧倒的に魅力的であるということです。地方出身の企業もたくさんあります。「地方の持つポテンシャル」に気づいていないのは実は、実際に住んでいる地方の人だけなのです。

「地方の持つポテンシャル」とは、具体的には何なのか。「東京の飲食店」と「地方の飲食店」を対比しながら考えていきましょう。私は東京で、業界大手の「和民」を運営するワタミ株式会社の役員を務めていました。

 居酒屋をはじめとする外食産業にとって、東京はとても厳しい市場です。とにかく儲からない。材料は高いし輸送費も高い。家賃もどんどん上がっていく。アルバイトの獲得競争も熾烈で、人件費も高くなる。水道光熱費も高い。そのうえ参入障壁は低く、競合店はどんどん増える……。このような環境の中で利益を出すのは、至難の業です。

 一方、石川県輪島市で山本亮さんが営む輪島市の農家レストランはどうかというと、家賃も人件費も、東京と比べたら信じられないほどに安く抑えられます。レストランで出す食材も地元のものですから、やはり安く済みます。

図_地方は「利益」を出しやすい図:『改訂版 地方起業の教科書』(あさ出版)より 拡大画像表示

「東京」と「地方」。どちらが利益を生み出しやすいか、つまり「儲けやすいか」は明らかでしょう。

 これは決して、外食産業に限った話ではありません。数々のゲーム・広告Webサービスを生み出している会社である面白法人カヤックも、早くから地方の働きやすさ、コストパフォーマンスのよさに目をつけ、拠点を鎌倉に移しました。「東京で消耗しながら、細々と稼ぐ」より、「地方で伸び伸びと、大きく稼ぐ」ことに魅力を感じ、拠点を地方に移したり、地方で新たに起業したりする事例が今、増えているのです。