ANAの機体Photo:PIXTA

新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はANAホールディングス、日本航空の「航空」業界2社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

コロナ5類移行を追い風に
ANAの純利益は「30倍」に

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の航空業界2社。対象期間は2023年2~6月の四半期としている(2社いずれも23年4~6月期)。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・ANAホールディングス
 増収率:31.6%(四半期の売上高4610億円)
・日本航空
 増収率:41.9%(四半期の売上収益3814億円)

 航空業界2社は、いずれも前年同期比で大幅増収となった。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績悪化からの反動増の影響が大きいものの、両社が着実に復活しつつあるのは確かなようだ。

 2社にとって復調への追い風となったのは、今年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行したことだ。これによって各種規制が緩和され、旅客需要が堅調に回復した。

 客足の戻りによって収益性も改善し、23年4~6月期は2社ともに利益面が前年同期実績を大きく上回った。詳しい数値は後述するが、ANAホールディングスの純利益は前年同期比で「30倍」になるという驚異的な伸びを見せた。

 また日本航空の方も、同社が重視している利益指標「財務・法人所得税前利益」と純利益が、前年同期はともに赤字だったが、23年4~6月期は大幅な黒字に転換した。

 それでは、両社の旅客数は具体的にどこまで持ち直したのか。次ページでは、両社の増収率の推移を紹介するとともに、国内線・国際線の現状を見ていく。加えて、利益面の状況についても解説する。