ここ数年、日本をはじめ世界中で、会社を早期にリタイアして資産運用だけで生活する「FIRE」への注目度が高まっている。「働かずに悠々自適な余生が送れる」とのイメージが広まり、FIRE達成を目指す人はいま多い。
しかし、FIREをしたからといって、「本当に充実した人生」は手に入るのだろうか?
そこで今回は、「金銭的自立を目指す全ての人が読むべき」「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃の書!」と絶賛されている、全米ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の内容をベースに、FIREをしても心が満たされなかった「不幸な人」のエピソードをご紹介する。(構成/根本隼)
「新しいライフスタイル」としてのFIRE
FIREとは、「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉で、「経済的な自立」と「早期リタイア」を意味している。
より具体的にいえば、投資などを通じて積極的に資産を増やすことで、会社からの給与収入に頼らない「経済的自立」を手に入れ、定年よりも前に「早期リタイア」することで、悠々自適の生活を送る「新しいライフスタイル」がFIREだ。
以前は、アメリカやヨーロッパで流行していたが、いまや日本や中国にも広く普及し、世界中で「FIRE達成者」が続出している。
働き方や人生に対する価値観が多様化
もともと日本では、新卒で入社した会社で定年まで働き続けることが当たり前だった。しかし、最近は、ヘッドハンティングや自発的な形での転職が増えるなど「労働市場の流動化」が進み、働き方や人生そのものに対する価値観が多様化した。
「定年まで勤めあげる」のが美徳とされていた時代から完全にシフトするなかで、FIREも「賢い人生戦略」のひとつとして熱い注目を集めている。
しかし、「FIREさえすれば幸せになれる」というほど単純な話でもないようだ。
ここからは、『JUST KEEP BUYING』より一部を抜粋・編集して、FIREに成功した男性の「まさかの本音」をご紹介する。
「何のために」リタイアするのか?
リタイア後の時間をどんなふうにすごしたいか?
どのような人づき合いを望んでいるか?
リタイア生活で一番大切なことは?
これらの問いに対し納得のいく答えを導けたら、幸せなリタイアができるだろう。
あいまいな答えしか浮かんでこないなら、せっかくリタイアしても、失望したり、失敗したりしてしまうかもしれない。いくら経済的にうまくいったとしても、心身の健康が満たされていなければ意味がないからだ。
私が「FIREムーブメント」をあまり好きではないのはこのためだ。
(P.178)
FIREしたら、自分の存在意義を見失った
テレンスは2年前にリタイアし、現在はバケーションレンタルサイトの「エアビーアンドビー」を利用し、1~3ヵ月単位で世界各地を転々としている。そのライフスタイルは多くの人に華やかでうらやましいと思わせるものだ。
だがテレンスは、「孤独を感じている。たいていの人はこの生活を楽しめないだろう」と言った。
「FIREノマド的なライフスタイルを受け入れるのは、自分はもはや世の中にとって重要な存在ではないと受け入れることである。存在しているのかしていないのかわからない、手応えの感じられない世界で生きていかなければならないのだ」
(P.179)
結局、お金は道具にすぎない
お金は多くの問題を解決できる。だが、すべての問題は解決できない。お金は人生でほしいものを手に入れる道具にすぎない。
そして残念ながら、人生に何を求めているのかを本当に理解するのは簡単ではないのだ。
(P.180)
(本稿は、『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の一部を抜粋・編集して構成したものです)